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悪い金利上昇が起きると銀行にどれだけ損失が出るか

悪い金利上昇が起きると銀行にどれだけ損失が出るか

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(日本経済新聞11/11/18から引用)預金が本業の貸出金に回った割合をみる「預貸率」は9月末で大手行合計で70%足らず。
(中略)2000年代に入ると企業の財務リストラが加速し、銀行の預金と貸出金のギャップが広がった。貸出金に回らない30%の預金はどこに行ったのか。これが国債に流れている。
銀行にとって国債は「貸出不振を補う打ち出の小づち」(メガバンク幹部)。銀行による国債の保有残高は過去最大規模に積み上がっている。
(中略)「長期金利が1%上昇すれば、大手銀行で3兆円強の債券損失が発生する」。10月に日銀がまとめた報告書は国債保有のリスクを厳しく指摘する。
実際、03年夏には長期金利が3カ月で0.4%から1.6%へと1%以上も上昇し、1000億円規模の含み損を抱えた大手銀行もあった。
「残存期間が10年超の国債は持たないよう指示している」。三井住友銀行の幹部はこう明かす。(中略)保有債券の残存期間が長いほど、金利上昇リスクが高くなるからだ。
SMBC日興証券の資産では、大手銀行が保有する国債の平均残存期間は9月末で3.2年。半年前よりも少し長くなった。より多くのリスクを抱えるのは地方銀行。(以下略)

銀行の保有する大量の国債と金利上昇について解説してある記事でした。

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大手銀行の国債保有残高は8月時点で約102兆円もあるそうです。銀行や信用金庫などの金融機関は、貸出業務が不振です。

会社や個人事業主に事業資金を融資したり、住宅ローンや自動車ローン、個人向けローンなどの貸出業務は銀行の根幹ですが、それが不調なのです。

日銀は実質ゼロ金利政策を復活させ、私たちが銀行などから融資を受ける際の金利も低くなっているのですが、融資が増えません。

理由を考えますと、第一にデフレが続いて景気がよくならないことがあります。そうなると消費が増えませんから、企業の雇用や設備投資なども増えません。守りの経営になってしまいます。

そうなると、お金を借りる人や企業も減るというわけです。

第二に、今年は東日本大震災がありました。被災地にも大きな被害が出ただけでなく、電力不足や心理的影響によって日本全体に経済が一時停滞しました。


低い預貸率

銀行は多くの人から預金としてお金を集め、それを融資して利益を得ます。そして預金者には利子を払わなければいけません。

そのためにはどんどん貸出業務を行わなければいけませんが、それが難しいという状況です。預貸率がこれだけ低いというのは90年代にはなかったそうです。

そこで、銀行は資金を運用するために国債を購入しています。国債を持っていれば利息がつくからです。こうして運用先を求めて銀行が多くの国債を保有しています。

多額の借金を抱える国としても、銀行が赤字国債を引き受けてくれるので国内消化ができ(国内の投資家が国債を買ってくれること)、願ってもないことでした。


金利上昇の危機

しかし、これからは違います。これまでのように銀行や保険会社などの機関投資家が大量に国債を買うのは不可能になるとみられています。

すると、国債を買ってくれる人が減るので、その分金利が上昇します。また、国の財政が悪化すればするほど債務不履行(デフォルト)のリスクも上がりますから、ますます金利が上がります。

そうなると、銀行の保有する既発(発行済の)国債の価格が下がってしまうのです。ただ、国債は満期まで持ち続ければ、元本と利息が償還される(返ってくる)ので、問題はありません。

しかし、そのためには国の財政が破綻しないことが前提です。国が数年以内に増税などの財政再建に取り組めばまだしも、もたもたしていれば金利が急騰して財政破綻してしまうことはありえます。

また、国債価格の下落によって含み損が出れば、銀行の株主から今のうちに売ってしまえという圧力がかかるかもしれません。現にヨーロッパの銀行ではそうなっているそうです。

含み損を抱えたままでは株価が下がるからです。確かに株価は心理的な要因が大きいので、「危ない国債をたくさん持っている」と見なされれば、不当に株価が下がることもありえます。

加えて、金利が上がりだすことで国債の売りが売りを呼び、パニック的に国債価格が下がることも否定できません。


期間の短い国債

国債の残存期間(償還までの期間)が短いほうが、債券はリスクが小さいです(その代わりに利回りが高い)。たとえば残存期間が1年の国債なら、1年後まで国の財政が持ってくれれば、元本と利息を受け取れます。

一方、仮に50年という残存期間の国債だとどうでしょうか。50年後に日本がどうなっているか不安です。

というわけで残存期間が短い債券のほうがリスクが小さいので、大手銀行も残存期間の短い債券を持つようにしているのです。

ただここでわからないのが、60年償還ルールとの関係です。赤字国債にはこのルールがあり、どんな償還期間の国債でも、元本が全額償還されるには60年かかるというものです。

例えば償還期間が10年の国債なら、6年経つと元本の1/10が償還され、残りが借換債として新たに交付されます。そしてさらに6年経つとまた元本の1/10が償還され、残りが借換債になるという仕組みです。(個人向け国債は対象外)

そのため、大手銀の国債の平均残存期間が3.2年というのは、それだけ経てば全額が償還されるのか、それだけ経っても借換債としてすぐに現金化できないものも含まれているのかがよくわかりませんでした。

60年償還ルールにしても詳しく、わかりやすく解説してある本がないんですよね。この点に詳しい方がおられたらぜひコメント欄からご教授ください。


結論

私が思うに、銀行などがリスクに備えて残存期間の短い国債を増やしているのはよいことです。背景には欧州債務危機があるでしょう。

なにしろギリシャの国債利回りは20%を超え、イタリアやスペイン国債も7%まで上昇しました。

この記事にあるように日本では金利が1%あがるごとに大手銀行に3兆円の損失が出るとすると、7%になれば約6%の上昇ですから、18兆円の損失が出ることになります。

もっとも、7%になってしまえば、借金漬けの国と地方の財政がとてももたないでしょうね。利回り1%の上昇で国の予算が4.5兆円圧迫されるそうですから、4.5×6で27兆円、今よりも国債利払い費(1年あたりの)が増えてしまいます。

こんなことになってしまえば公務員への給料は払えず、行政サービスはストップします。そうなればもはや国債を買う人などいないはずです。

ただ、銀行がこのような備えをするようになったということは、いよいよ安定して国債を引き受けてくれる大口投資家が減るということでもあります。そうなると金利が上昇し始めます。

というわけで、結論はいつも同じですが、なるべく早く財政再建に取り組むべきだということです。今なら日本経済にもまだ余裕があるからです。

財政再建は不要だという意見も聞きますが、私には納得できません。増え続ける社会保障費、減り続ける労働人口と国民の貯蓄(これが銀行が国債を買う原資です)…。

加えて、日本中の橋などのインフラが建設から数十年経ち、老朽化が進んでいます。これを直すだけでも巨額の費用が必要なはずです。ということはさらにお金が必要になってしまうのです。

財政建て直し論は財務官僚の陰謀という声も聞きますが、上記のように私はそんな小さな話ではないと思います。文字通り国の存亡に関わる問題だと思います。

もちろん、歳出削減も徹底して行う必要があります。しかし、財政悪化を放置すれば、日本に未来はないでしょう。これが杞憂であればうれしいのですが。

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