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役員報酬の個別開示は疑問だ

役員報酬の個別開示は疑問だ

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(読売新聞10/6/11から引用)
役員個人の報酬額まで開示させるのは、行き過ぎだろう。金融庁が上場企業に対して、報酬が1億円以上の役員の氏名や報酬額を開示するよう義務付けた。

3月期決算企業の場合、該当する役員名と報酬額を記載した有価証券報告書を、今月中に公表しなければならなくなった。

情報開示の充実は大切だ。しかし、プライバシー保護の点で課題も多く、日本経団連など経済界も強く反発している。実施の是非について事前に議論が尽くされたとは言いがたい。金融庁は開示義務付けを見直すべきだ。

これまでは、役員全員の報酬総額を開示すればよかった。だが、欧米発の金融危機で、高額な役員報酬が問題視されたことや、欧米ではすでに実施している国が多いことから個別開示に踏み切った、と金融庁は説明している。

欧米の金融機関は、役員が高額報酬ほしさに、利益率は高いがリスクも大きい投資に走り、危機を招いた。役員報酬宇野業績連動が極端すぎる点が問題だった。こうしたことは、ほとんどの日本企業には当てはまらない。

報酬の水準も違う。米国の上場企業の最高経営責任者は、平均390万ドル(3.5億円)で、1000万ドル(約9億円)を超える企業が300社もある。日本の上場企業は、役員報酬の平均が2500万円にすぎない。

資生堂が3人の役員報酬を自主開示し、社長ら2人が1億円以上だった。大企業のトップクラスなら1億円以上もいるだろう。

チェックすべきは、会社の規模や業績に比べて報酬が異常に高すぎ、株主の利益を損なっていないかだ。それなら、従来の総額開示で、ことは足りる。

報酬額という個人情報を、不特定多数の人がネットで簡単に見られる有価証券報告書に載せることの副作用が心配だ。例えば犯罪などの助長である。

所得税の「長者番付」が廃止されたのは、振り込め詐欺などの犯罪や、嫌がらせの標的にされる例があとを絶たなかったためだ。同じ轍は踏まないだろうか。

金融庁が今年2月、個別開示案を示した際、意見募集に多くの反対意見が寄せられた。だが、亀井金融相(当時)は「世間に知れて困るなら報酬を下げればよい」などとして、猶予期間も設けず実施した。

あまりに強引かつ拙速だ。これでは、大企業たたきで喝采を得ようとする、ポピュリズム(大衆迎合)政治そのものではないか。(引用終り)

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結論から申しますと、私も全く同感です。この個別開示は、これまでは役員全員でいくら報酬をもらっています、と開示していたものを、1億円以上もらっている人は誰がいくら、と開示するようにするのです。

そして狙いは、記事にあるように欧米の金融機関で、役員が高い報酬をもらいたいがためにハイリスク・ハイリターンの投資をして、結果的に金融危機を招いたことを防ぐためだそうです。

業績連動性の役員報酬では、リスクの高い金融商品で運用してもし利益が得られれば、それだけ自分のもらえる報酬が高くなるというわけです。


経営者はそれだけの責任を負っている

確かに、リーマンショックのときにアメリカの金融機関で、ディーラーが100億円を超えるような報酬を得ていたということなどがありました。

これは行き過ぎでおかしいです。しかし、日本の上場企業でそんなに多額の報酬を得ている役員はおらず、記事にあるようにアメリカに比べると報酬の水準も雲泥の差です。

私は別に大企業の役員の肩をもつつもりはありませんが、彼らは多数の従業員の生活を担い、利益を出さなければ株主に経営責任を追求されます。株主の多くがノーといえば、解任される立場です。

その責任の重さを考えると、日本の上場企業の役員のもらっている報酬は高すぎるとは思いません。

確かに会社の業績が思わしくないのに、役員が多額の報酬を得ているというのならそれはおかしいです。しかしそれは、役員全員の報酬総額を開示すれば十分にチェックできます。

そして、記事にあるように多額の報酬を得ているからと言って、その人の個人情報をネットで公開する必要があるのでしょうか。

記事に長者番付の話が載っています。長者番付はもともと、高額所得者を公表することで、その人が脱税していないかを市民に通報してもらうためのものでした。意図はわかりますが、嫌な制度だと思います。

しかし、犯罪などを誘発したために、廃止されました。今回の報酬個別開示も同じことになる危険性は十分にあります。

こうした犯罪すら誘発する危険のある制度を、反対意見が多かったのにもかかわらず強行したことは大いに疑問です。当時の金融相の「世間に知れて困るなら報酬を下げればよい」という発言も制度の不備を他に責任転嫁しているとしか思えません。

別に企業がまっとうな経済活動をして、利益を上げた上で役員にそれなりの報酬を払うことは何の問題もありません。問題があるのは個別開示制度の方です。


マイナスが大きい

結論を言えば、マイナスが大きくてプラスがほとんどない制度だと思います。すぐに撤廃すべきです。

例えば、金融機関の役員がハイリスクな取引をするのがいけないのなら、それを直接規制すればよいのです。あるいは監査役や株主総会の権限を強くすればよいのです。

高額報酬をもらっている人をさらし者にして鬱憤晴らしをしているとしか思えません。

なお、この引用記事が書かれたあと、実際に個別開示が行われ、日産自動車のカルロス・ゴーン社長が7億円くらいの報酬をもらっていたとして話題になりました。

そのときの日産はあまり業績が良くなかったので、不当な報酬ではないかと言われたのです。これは確かにそのとおりだと思いますが、それにしても役員全員の報酬総額を開示するだけでもそれはチェックできたのではないでしょうか。やはりこの制度は不要だと思います。

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