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所得税の最高税率引き上げの問題点

所得税の最高税率引き上げの問題点

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(読売新聞10/6/24から引用)
政府税制調査会の専門家委員会が論点整理の形で、税制改正の方向性を打ち出した。危機的な財政事情を念頭に、社会保障の安定財源として消費税の重要性を強調している。極めて妥当な指摘だ。

反面、所得税改革に関し、所得が増えるほど税率が高くなる累進構造の強化に力点を置いているのは問題だ。

菅首相が言及する将来の消費税率引き上げでは、一般国民の負担が増すため、高所得層への所得課税強化で、一定の理解を得ようとする狙いが読み取れる。

確かに消費税には、低所得層ほど税負担が相対的に高まる「逆進性」が指摘されている。

だからといって、累進税率の強化につなげて考えるのは筋違いだ。消費税の逆進性の解消は、生活必需品への軽減税率導入などで対応すべき問題である。

(所得税は税収が落ち込み、基幹税としての役割が低下しているが)累進課税を強めたとしても、負担する高所得層の数は限られるため、国の税収全体から見て、増収分はわずかなものだ。

所得税と住民税を合わせた個人所得課税の最高税率は、1980年代には88%に達していた。

「こんなに税金が高いと働く意欲がなくなる」。そんな声に押されて、米国や英国の税制改革に歩調を合わせるように日本でも最高税率が引き下げられた。

現在は50%だが、それでも米ニューヨーク市の47.6%、フランスの48%などを上回っている。

むしろ、今考えるべきは、課税最低限の引き下げだ。日本の課税最低限は標準世帯で年収約325万円である。国際水準に比べてかなり高く、それだけ多くの人が税金を納めていないことになる。

各種の控除を縮小すれば最低限が下がり、より幅広い層に税負担を求めることになるが、国民が広く薄く負担するという税の原点からみてやむをえまい。

専門家委員会は、累進構造を強化する理由として、税の所得再分配機能が衰え格差の拡大を招いたこともあげている。

だが、行き過ぎた累進強化は大衆迎合路線そのものだ。所得再分配を考えるなら、年金や医療、介護といった社会保障政策の充実が先決である。(引用終り)

引用記事は読売新聞の社説です。税調が消費税の重要性を強調しているのはまさに妥当だと思います。なぜなら、消費税は諸外国と比べてもだいぶ上げる余地があり、税率を1%上げると2.4兆円の税収増が見込めるからです。

とはいえ、私も消費税が上がることは決して歓迎はしません。消費が落ち込み、景気が冷え込むでしょう。しかし、累積赤字がどんどん膨らみ、税収をはるかに上回る赤字国債を発行している国の現状を見ると、財政破綻やハイパーインフレという最悪の事態を避けるためには消費税上げはもはや避けて通れないと思うのです。

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所得税上げの疑問

一方、所得税の最高税率引き上げは私も疑問に思います。確かに消費税は逆進性の問題があります。税金は収入の多い人が多く負担するというのが原則で、累進性と呼ばれます。

一方、消費税は所得の少ない人でも食べ物や服など何かを買うときに必ず支払います。そのため、低所得層ほど負担が大きくなってしまうのです(逆進性)。

ということは、政府にしてみると消費税を上げれば、特に低所得者に負担を強いることになり、反発が予想されます。そこで、その布石として、まず所得税率を上げることで富裕層に相応の税負担をお願いし、その上で消費税を上げようというのが狙いではないかと記事は書いているのです。

私もまさにそのとおりだと思います。そして、消費税の逆進性の問題は軽減税率導入などで解消すべきだというのも本当だと思います。

これは、例えば食品や医薬品などの生活必需品は消費税率を低くすることで、低所得者への税負担を軽減するものです。


消費税の軽減税率

この軽減税率ですが、ヨーロッパなどでは導入している国が多いそうです。消費税の逆進性を緩和するために良い策だとは思いますが、一方で問題もあります。

それは、小売店などにとっては消費税の計算が面倒なことです。例えば食べ物の種類によって税率が違うという制度の場合、この食べ物は必需品で低い税率か、それとも嗜好品として高い税率かの判断が難しいといった難点があるそうです。

それだけでなく、小売店などの手間もかかります。こうした問題もあるのですが、やはり消費税を上げるからには軽減税率などの導入は不可欠でしょう。

ところで余談ですが、自動車などは生活必需品ではないんでしょうね。しかし、交通の不便なところで車がないと生活できない場合、必需品とも言えると思うのですが。

さて次に、所得税の最高税率を上げてもたいした税収増にはならないという点です。1%上げると約350億円の税収増になります。ということは、仮に現在40%のところを50パーセント(プラス住民税)にしても、3500億円の増加に過ぎないわけです。

おまけに、日本の最高税率はフランスなどよりも高いんですね。知りませんでした。以前の最高税率が88パーセントというのはいくらなんでも異常ですね。

つまり、高所得者は単純に言えば10億円の所得があれば、約9億円が税金で取られるというべらぼうぶりです(笑)。これは昔の年貢取り立てよりよっぽどひどいですね。

お金持ちには多く税負担してもらうとはいえ、これはむちゃくちゃです。これだけ税金で取られたら、まさに働く意欲などなくなってしまいます。酷税国家です。

その後、さすがにおかしいということになり、現在では住民税とあわせて50パーセントが最高になっています。

さて、仮に10パーセント所得税を上げたら、3500億円ほどの税収が見込めます。しかし、国家が国民の収入の半分を超えて税金として徴収することは果たして妥当なのでしょうか? 私も疑問に思います。

そこで、最高税率を上げるのではなく、他の方法で高額所得者に税をある程度負担してもらおうということになります。一つは、課税対象を広げることです。つまり、所得控除を縮小したりして、所得を多くするわけです。


課税最低限

例えば、現在は上限なしの給与所得控除に上限を設けるなどです。

もう一つは、記事にある課税最低限の引き下げです。私は詳しく知らないので、ネットで調べてみました。

財務省のページを見ると、夫婦と子2人で325万円となっています。つまり、この家庭ではこれ以上の収入があってはじめて所得税を払うことになります。

他国と比べますと、アメリカは同じくらい、フランスはもっと高い(優遇されている)です。ドイツやイギリスはかなり低いです。ということは、日本の標準家庭は課税最低限が国際的に高いといえそうです。

一方、夫婦のみの世帯は他国と比べてもけっこう低い、つまり納税をしている世帯が多いと言えます。夫婦子一人、単身をみても、かえって低いようです。

つまり、日本は夫婦子二人の世帯は国際的には税負担が軽いが、その他の世帯ではそうでもないようです。

あとは税率なども違うでしょうから一概には言えませんが、そう多くの人が税金を納めていないとも言えないと思います。そのため、この点は引用記事には同意しかねるところです。

ただ、より幅広い層に負担をしてもらうというのは、仕方のないことだと思います。なぜなら、公共サービスはみんなが受けているものだからです。といっても、低所得層には税率を低くすることはもちろんです。


まとめ

まとめますと、所得税の最高税率引き上げはそう税収増が見込めるわけでもなく、国家が国民の稼いだお金の半分を超えて税として取ることには疑問があります。そのため、最高税率引き上げではなく、給与所得控除などの見直しによって、高所得層には税負担をお願いします。

一方、消費税は手間などはかかりますが軽減税率などを導入した上で、税率を上げるのはやむを得ないでしょう。

なお、税制と株式投資について一言。単純に言えば、増税されると株価は下がるでしょう。増税をすれば国民が自由に使えるお金が減るわけですから、消費が減るからです。

その結果景気が冷え込み、株価も下がるというわけです。

ただし、増税をすれば財政再建になり、日本経済に対する安心感が広がります。国民も年金や医療などの将来を安心できるので、逆に消費が増えるという考えもあります。

また、財政再建がされれば、日本国債の金利は下がるでしょう。日本の財政が健全になるので、国債を安心して買えるからです。その結果、利回りの低い国債や銀行預金よりも、株を買おうという人が増えるでしょう。

そう考えると、増税すると株価が上がるか下がるかというのは、答えのでない問題でもあります。

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