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政府・日銀の円売り介入を解説

政府・日銀の円売り介入を解説

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(読売新聞10/9/16から引用)
政府・日本銀行が15日、円売り・ドル買いに踏み切ったことを受けて、円相場は85円台まで急落し、急激な円高の流れはいったん止まった。

ただ、欧米の通貨当局との協調介入は実現せず、「効果は限定的。円高の流れは変えられない」との見方は根強い。

財務省国際局の幹部は介入直後、「勝算はある」と言い切った。ただ、市場はこうした見方に懐疑的だ。

日本が前回、介入を行った2004年と比べ、為替市場での1日あたりの取引量は2倍近く(ドルベース)まで膨らんでいる。政府・日銀が同じ金額の介入を実施したとしても、効果は半分しかない。

ある経済官庁の幹部は、「単独介入は、大海原に向かってバケツで水をまくようなものだ」と指摘する。

金融政策による「援護射撃」の余地も乏しい。史上最高値(1ドル=79円75銭)を記録した1995年の円高局面では、日銀が歩調をあわせて利下げを行ったため、1ドル=100円台まで押し戻すことに成功した。

だが、現在は政策金利を引き下げる余地はほとんどない。

政府・日銀は、介入で放出した資金を市場から吸収せず、実質的な金融緩和効果があるとされる「非不胎化」を進める考えだが、介入の効果を持続させるのは容易ではない。

国際金融の世界では、介入の成功例よりも、失敗例の方が目立つ。最近では、自国通貨高に立ち向かったスイス国民銀行(中銀)が敗退した。

スイス中銀は、今年に入って進んだスイスフラン高・ユーロ安に対し、単独介入で対抗した。だが、単独介入の流れは止められず、今年上半期に、スイスフランに対するユーロの価値は約1割下落。

スイス中銀は、為替変動によって143億スイス・フラン(約1兆2000億円)を失った。

財務省で通貨政策にかかわる幹部は、「スイスの例は知っている。だが、口先介入を行ってきた以上、『やるときは、本当にやる』という姿勢を示す必要があった」と悲壮感をにじませた。

政府・日銀の市場介入で急激な円高にひとまず歯止めがかかったが、輸出主導で持ち直してきた日本経済の先行きは予断を許さない。

円相場が現在の水準では、依然として自動車、電気などの業界は苦戦を強いられ、輸出の増加ペースが鈍化するとの見方が強い。

円高が長期化すれば、企業が生産・開発拠点を海外に移す動きを食い止められず、日本国内の空洞化が進んで雇用に悪影響が出る可能性がある。

政府は介入により、景気下支えに向けた断固たる意志を示した格好だが、景気が今年度後半には踊り場入りするとの悲観的な見方は根強い。

(引き続き引用)エコカー補助金の終了を受け、10月以降は新車の生産・販売の落ち込みが予想されるなど、個人消費は伸び悩みそうだ。(引用終り)

先日の円売り介入は、唐突だっただけに驚いた人が多かったようです。野田大臣も様子をみると発言されていましたしね。

引用記事には95年以降の主な市場介入が掲載されています。それによると、03年の円売り介入は1ドル116円台まで進んだ円高を是正するためだったんですね。

それから比べると、今は85円近辺で円/ドルは推移しています。最近は2桁の円相場も見慣れてしまいました。

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円高はなぜ悪いか

まず、なぜ円高が日本経済にとってよくないかを考えます。それはやはり、輸出で主に稼いでいる我が国の産業にとって、円高は不利だからです。

例えば日本の企業がアメリカに車を売ったとします。1ドル=120円なら1万ドルの車が売れれば円換算で120万円の売上です。一方、1ドル=80円だと、80万円の売上になってしまいます。

すなわち、利益も減ってしまうのです。もちろん輸入する際には、円の価値が高いので得なのですが、輸出主導の日本経済では円高になりすぎるとマイナスです。
参考:株価と為替との関係


ミセス・ワタナベ

次に、市場は今回の為替介入が円高を止められないと見ている点について。この記事を書いている10/6現在、円は82円前後になっており、この市場の予想は当たっていたということになります。

前回の介入のときより、為替市場での取引量が2倍近くになっているとは驚きました。なぜこれほど増えたのかを考えますと、一つはFX(外国為替証拠金取引)の影響でしょう。

FXは為替を取引するもので、レバレッジを高くできるのが大きな特徴です。すなわち、ハイリスク・ハイリターンの取引も可能なので、うまく行けば大きな利益が得られるというわけです。

このレバレッジはあまりに高すぎる場合もあったので、法改正により将来的には最大25倍に規制されますが、それでも高いです。

25倍ということは、為替が4パーセント動けば、儲かったときには資金が2倍になり、損をしたときには資金がゼロになってしまいます。

現実には強制的に決済されるか追証(追加証拠金)の差し入れが求められますので、ゼロになることは少ないとは思いますが、それだけのリスクもあるということです。

さて、このFX人気のために、FXに参加している投資家の資金によって相場が動くことを海外では「ミセス・ワタナベ」と呼んでいるそうです。


金利を下げる意味

つまり日本の投機筋が為替相場を動かしているというわけです。さて、こうして取引量が倍増したため、政府と日銀が同じ額を円売り・ドル買いしたとしても、効果が半分程度しかないということです。

次に、金融政策によるサポートについて。確かに現在はただでさえ政策金利が低いので、さらに低くして円高を食い止める余地が殆ど無いのです。

ここで、なぜ政策金利を下げると円高を是正できるのかを考えてみます。それは、金利の高い通貨は買われ、低い通貨は売られるからです。

ある国の通貨を持っていれば、金利をもらうことができます。すると、投資家は金利のことだけを考えれば、高金利の通貨の方がお得になります。例えば、円はすごく低い金利ですが、ドルやポンドはずっと高いです。

それよりももっと高いのは、南アフリカのランドなどです。

このように、リスクや相場の変動を考えなければ、金利の高い通貨は価値があるので、値段が上がる傾向があります。

ということは逆に、円の金利を下げれば、円の魅力が減って値下がりする、つまり円安になるということです。

ところが日本はデフレーション脱却のために金利をかなり低くしており、円高是正のために金利をさらに下げたくても、ほとんど下げる余地がないのです。


非不胎化

ちなみに、10/5に日本銀行が政策金利を下げると発表しました。その結果、日経平均株価は少し上昇した一方、円相場は一時円安になりましたが、結局上がってしまいました。

次に、政府と日銀が非不胎化を進めるという点です。円売りの為替介入では、政府が政府短期証券(FB)を発行して、市場から円を調達します。そしてそのお金で民間金融機関(銀行など)の持つドルを買います。

そうすると、円が支払われるので、その分市場に円が放出されます。円が増えるとインフレの原因となります。ここでいう胎化とはインフレの芽が出るという意味です。

それをさせないために放出した資金を市場から回収するのが不胎化ですが、それを今回は日銀がしない、つまり非不胎化というわけです。

ややこしいですね。つまりは金融緩和をして金利を下げるために、非不胎化をするということのようです。

続いて、海外での介入の失敗例です。スイスも失敗したんですね。自国のスイス・フランが今年になって高くなったため、中央銀行(日本で言えば日銀)が単独介入しました。日本と似ていますね。

ところが、ユーロ安が止められずに、かえってユーロが下がり、スイス中銀はその結果約1兆2000億円も損してしまったとのことです。

スイスにとっても、スイスフランがあまりに高くなってしまっては自国経済に悪影響が出かねないため、しかたなく介入したのでしょう。


スイスの例

スイス・フランは金と並んで有事の際に買われることで有名です。それは、考えるにスイスが永世中立国で、政治的に安定していること、プライベートバンクで有名なように金融大国であること、産業が発展していることなどが理由だと思います。

そして、おそらくギリシャ国債危機などによりユーロ圏の多くの国は自国経済のためにユーロ安を望み、その反動でスイスフランが高くなってしまったのでしょう。

単独介入になってしまった点は今回の日本と似ていますね。結局スイス中銀が買ったユーロはさらに値が下がってしまったため、損失がたくさん出てしまいました。

それでも日本の財務省は、この例を知りつつも、やるときは介入しますという姿勢を見せる必要もあって円売り介入に踏み切ったようです。

さて今後ですが、確かに介入がされてしばらくは円高傾向が収まりました。しかし、それでもかなりの円高であるため、輸出産業には厳しい状況が続くだろうと記事には書かれています。

円高が続けば、日本企業が生産拠点などを海外に移す動きは止められないという点について。円高ということは、海外に工場などを作って現地の人を雇うときに、実質的に賃金として払うお金が安くて済みます。

これは、円高の時に日本人が海外旅行に行くと、ものを安く変えるのと同じ理屈です。


産業の空洞化

ただでさえ海外は現地の人への人件費などが安い上に、円高のためにさらに賃金の負担が安く済みます。そうなれば、記事にあるように生産や開発の拠点を海外に移すのは当然とも思えます。

ただ、そうなると国内では空洞化が進んでしまい、雇用が悪化してしまいます。そうすると、国内の労働者の賃金が減ったりなくなってしまいますから、自由に使えるお金も少なくなってしまいます。

その結果、消費が落ち込んでさらに景気が悪くなる、という悪循環になってしまいます(デフレ・スパイラル)。

そして、例えば自動車は9月末にエコカー補助金が終了した反動が来て、生産台数や販売が大幅に下がってしまいました。このように日本経済はかなり苦しい状況です。

政府の見解では経済はもう少し悪くなってしまうと不況、ということのようですが、さもありなんという気がします。

もちろんそれを防ぐための今回の円売り為替介入なのですが、スイスと同じく日本以外の国は自国通貨安を望んでいるために、単独介入になってしまいました。

そして、単独介入では円高を止めるのはまず難しいでしょう。日本銀行も政策金利をさらに下げて金融緩和に努めましたが、さらに経済を振興する法人税下げなども必要になるでしょう。

なお、エコカー減税について、途中で終了はおかしいという意見もあったようですが、当初から予算を使い切ったら終了ということになっていたのですから、仕方ないと思います。

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