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地方銀行の金利リスクが最大に

地方銀行の金利リスクが最大に

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(日本経済新聞10/10/9から引用)

金利上昇時に地方銀行が損失を抱えるリスクが膨らんでいる。金利が1%上昇した場合に保有国債などから発生する推定損失額は、2009年度末に約4兆1200億円と過去最大になった。
地銀は貸出の伸び悩みで余った資産を相対的に安全な国債に振り向けており、期限の長い国債に投資する傾向も強まっている。
金利リスクは全国の地銀と第二地銀の合計106行を対象に、日銀が独自に集計した。国債のほか、貸付金利を固定した長期の融資も、市場金利が上昇すれば潜在的に損失が発生する。
地銀は貸し倒れのリスクが低く期間の長い地方自治体向けの貸出も伸ばしているため、金利リスクを抱えやすい。
前年度末の地銀の金利リスクは、その1年前に比べ14%増えた。
3メガバンクを含む大手銀行(12行)は11%増の約2兆5200億円だった。
大手銀に比べて地銀の金利リスクの増え方が大きいのは、地銀が残存期間の長い債券を保有する傾向にあるからだ。一般に、保有債券の残存期間が長いほど金利リスクは大きい。
地銀の債券の平均残存期間は3.56年で1年前と比べ0.42年長くなった。貸出による利益の低迷を補うため、より利回りの高い期間5年以上の長期国債の購入を増やしている。
一方、より短い債券への入れ替えを進めている大手銀は0.23年短くなり、2.10年となった。
日銀によると、地銀が保有している国債残高は今年8月末時点で約35兆6600億円と過去最大。地銀は大手銀とは異なり、国債以外の資産にリスクを分散させるノウハウに乏しい。
地方は金融機関同士の競争も激しく、貸出業務では収益をあげにくい。このため地銀の国債投資への傾斜はしばらく続きそうだ。日銀がゼロ金利政策を取る現状では金利上昇の可能性は小さいが、中期的にはリスクが膨らんでいることになる。
金利リスクとは:金利の変動によって、保有する資産に含み損などが発生するリスクのこと。例えば国債は金利が上昇すると価格が下落するため、国債を保有している金融機関は金利変動によって保有する資産(国債)に損失が発生するリスクを抱えていることになる。


国債は、銀行や信用金庫などの金融機関が大量に買っています。「海外投資家離れ、国債保有2割減」によると、09年の時点で約42%を保有しています。

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なぜ銀行が国債を買うかといいますと、その主な理由は、デフレが続いて景気が上向かないために、銀行から融資を受けて積極的に業務拡大などに乗り出そうとする借り手(企業や個人事業主)が少ないからです。

つまり、銀行は預金者などから借りたお金を、企業などに貸し付けることで利益を得ていますが、その融資先が少ないので、貸出業務で利益を上げにくくなっているのです。

そうなると、銀行は手元資金を何かで効率的に運用しなければなりません。そのためにうってつけなのが、「安全」(と言われている)日本国債というわけです。

いわば、お金の使い道がない上に低金利政策でお金が余っている銀行が、利回りを得るために国債を買っているというわけです。

そして、この記事は、地方銀行(大手銀行以外の銀行で、多くは所在する都道府県で最大のもの)と、第二地方銀行(地方銀行よりも多くは小規模なもの)が国債を保有しているが、その金利リスクが高まっているということを指摘しています。


なぜ国債保有が危険か

なぜ銀行が国債を保有することがリスクになるのでしょうか。それは第一に、金利が上昇すると、既発国債は価格が下がってしまうからです。

例えば、ある銀行が5年物の国債を持っているとします。その金利は1%だとします。

その後、新しく発行される国債は金利が2%になりました。すると、同じ国債なのに、古いものは1%も金利が低いことになります。

その結果、保有している国債を償還期まで待たずに売って、そのお金で新発国債を買った方が得だ、と思う人が増えます。

すると、市場で既発国債が大量に売られるので、価格が下がり、値下がり損(キャピタルロス)が発生してしまいます。

もし保有している国債を売らずに持っていれば、それでも時価が下がります。そうすると、国債を大量に保有している銀行や信用金庫などの場合、自己資本比率が低下して、自己資本比率規制に抵触してしまうかもしれないのです。

もちろん、こうした国債も償還期まで保有していれば、元本が支払われますので、それは問題ありません。


国の債務は増え続けている

ただ、引用記事にあるように、地方銀行は期間の長い国債を保有する傾向があります。

国債は、満期までが1年以内の「短期国債」、同2から4年の中期国債、5から10年の長期国債。

10年より長い超長期国債があります。そして、償還までの期間が長いほうが、利率が高くなります。なぜなら、国債を買う方にしてみれば、お金が返ってくるまでの期間が長いほうが、そのお金を自由に使えない期間も長いからです。

そうすると、その分金利を高くしてもらわないと割に合わないからです。

こうして期間の長い国債を持っているということは、償還期を迎える間に金利が上昇して、保有している国債の価格が値下がりしてしまうリスクも大きくなります。

特に日本は国と地方を合わせた長期債務残高が主要国中で飛び抜けて多い「借金大国」です。そして、2010年度の当初国家予算では、約44兆円もの赤字国債を発行しました。

このままでは、どんどん国と地方の借金が増えていってしまいます。ちなみに地方自治体の借金は国の借金とは別に考えるべきだという説もありますが、細野真宏氏は企業でも連結決算が財務の実際を表しているように、国と地方も一体で考えるべきだとおっしゃっています。

国の借金である国債の発行残高が増えれば、それだけ利払い費も増えます。そうすると償還や利払いに充てる費用をまかなうためにまた借金をするという雪だるま式悪循環になってしまっています。


金利の急上昇

このように国の借金がどんどん増え続けている以上、そう遠くない将来に日本の資金繰りが行き詰まり、国家予算が組めない事態になるかもしれません。

そこまで行く前に、金利が急上昇する可能性も高いと思います。なぜなら、スタンダード・アンド・プアーズなどの格付機関は日本国債を下げており、さらにネガティブ(先行きが怪しい)と見ています。

IMFも日本に増税をするなどして債務残高を減らすように求めました。

このように海外からは日本の国債が危険視される中、例えば国債の格付けがさらに下がって投機的レベルなどになってしまえば、一気に国債売りが起きるでしょう。

さらに、そうした債務不履行(デフォルト)の危険すらある日本国債を新たに買う人は減るでしょうし、買うとしても利回りは急上昇するはずです。

例えばアメリカなどの先進国の長期金利は3から4%前後です。すると、これを上回る金利にしないと、国債を買ってくれる人はいないでしょう。少なくとも私なら買いません。

仮に新しく発行する国債の金利を5%にすれば、第一に銀行や信用金庫などの金融機関の保有する国債の価格が大幅に下落します。それは銀行などの体質を弱めて、破綻に繋がる恐れもあります。

第二に、国の負担している国債費(国債の償還、利払い、消却に使っている費用)も金利上昇によって跳ね上がります。財務省の試算では、金利が1%上がると、国債費は4.3兆円上がるそうです。


期間の短い債券に

ただ、現在でも国債の利回りは1%台なのに国債利払い費は約10兆円ですから、実際はもっと上がってしまいそうにも思えますが…。

ここでは仮に金利が5%になったとき、国債費の増加が(少なめに見積もって)10兆円とします。これでも、ただでさえ国の予算は税収より赤字国債発行額が上回っているのですから、本当に予算が組めなくなってしまうかもしれません。

そうなったら日本はどうなってしまうのか、考えるだけでも恐ろしい気がします。

話が金利リスクよりも大きなところに行ってしまいましたが、それだけ地方銀行の抱えている金利リスクは大きいということです。

ただ、記事にあるように地方銀行は国債以外で運用するノウハウに乏しいので、なかなか他の手段での運用をできないということのようです。

日銀はゼロ金利政策などの包括緩和策をとり、短期金利と長期金利を低いままで抑えようとがんばっています。そのため金利は下げ止まったままです。

また、日本は消費税を上げる余地があるというのも、国債の金利が上がらない理由です。

ただ、今後も国の借金が増え続けたり、増税を見送り続けたり(私は心情的には増税は嫌ですが、財政再建のためにはやむを得ないと思います)すれば、国債の金利が上がる危険性はあります。

また、景気が回復して投資マネーの行き先が国債から株や投資信託、不動産などに変われば、それだけでも金利が上昇するかもしれません。

景気が回復すれば、税収も増えて借金を減らせるのではないか、という期待もありますが、経済成長だけで巨額の累積債務を解消するのは不可能なようです。

このように銀行が国債を大量に保有していることは、金利リスクを高めていることでもあります。もし金利が4%上昇すれば、地方銀の被る損失は推定で16兆円以上になってしまいます。

こうした問題をどう解決するかは難しいですが、地銀は少なくとも大手銀のように短い債券を増やすなどの対策が必要だと思います。

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