ホーム » 経済解説 »

日銀の包括緩和策の狙い

日銀の包括緩和策の狙い

スポンサード リンク

Pocket

(日本経済新聞10/10/6から引用)

(日銀の包括緩和策は)株や不動産を間接的に買取ることで、資産市場に民間のお金が流れやすくする効果を狙うが、日銀の財務が悪化するリスクもはらむ。
米投資運用会社ピムコのマネジングディレクター、マカリー氏は(グローバル経済の激変によって日銀が決断を促されたことを)「量的緩和競争」と呼ぶ。
夏以降で見れば先頭を走るのはバーナンキ議長率いる米連邦準備理事会(FRB)である。事実上のゼロ金利政策を取っているFRBは、11月2~3日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で本格的な量的緩和に踏み切るとの見方が浸透している。
日銀が今回の会合で手をこまぬけば、日米金融政策のズレを突く形で円高・ドル安が進むおそれがあった。
(中略)(日銀がETFやREITを買うことについて)中小企業の借り入れの大半は不動産担保で、銀行が多額の株式を保有する日本では、地価や株価の下落が貸し渋りや信用収縮を起こしやすい。
特定分野への資金流入を後押しし、価格形成をゆがめるリスクもあることを承知の上で、日銀はデフレ下のマネー収縮を食い止めようとしたのだ。
(中略)当面の金融緩和が欠かせないにしても、経済の失速を防ぎ、安定的な成長軌道に戻すには、政府の役割が大きい。
効果的な補正予算を速やかに編成するのに加え、成長を高める法人税減税や規制改革を急ぐべきだ。
資金が国内で有効に使われず、ゼロ金利の円を借りて、金などの商品や新興国通貨に流れ込みグローバルなバブルを膨らませるようでは、せっかくの金融緩和も空回りしかねない。
政府と日銀は知恵を出し合って、もっと政策を工夫すべきだ。

(引用終わり)
この記事でも指摘されていますが、日銀が株や不動産を間接的に買うというのは異例です。

ちなみに間接的に、というのは、株などの現物ではなく、それを組み込んだ上場投資信託(ETF)や、不動産投資信託(リート)を買うという形になっているからです。

スポンサード リンク


ETFなどを買う理由

そして、その狙いとしては、単に下値を買い支えたり、ETFなどを銀行が日銀に売って得たお金が市場に流れ込むので、量的緩和になるということかと思っていました。

しかし、それ以外の狙いが解説されています。つまり、中小企業が金融機関から事業資金などの融資を受けるには、多くの場合が不動産を担保にします。

具体的には、債務者である企業が不動産に主に抵当権や根抵当権を設定し、債権者である金融機関が抵当権の設定を受けるという形になります。

ちなみに根抵当権(ねていとうけん)は、一回の融資ごとに抵当権を設定・解除しなくても、一定の金額内であればその一つの根抵当権だけで担保にすることができる担保権です。

また、よく株式会社や有限会社、合同会社などは、株主の責任が有限なので、会社が負債を払えなくなっても、株主に責任が及ばないと言われます。

これは理論上はそのとおりです。そのため、中小企業で株主が社長一人だけという、いわゆるオーナー企業の場合、株主の有限責任というのはとてもありがたい制度にも思えます。

ただ、現実にはお金があまっていたり、担保として高額の不動産を提供できるような場合でない限り、社長さん個人も銀行などの貸主から会社の借金の保証人になるように求められることが多いです。

そうなると、会社が借金を払えなくなってしまうと、実際には社長さんの財産がその借金返済のために取られてしまったり、社長さんの自宅が抵当権の実行によって取られてしまうということになってしまいます。


貸し渋りなどを防ぐ

そうすると、もし中小企業の持っている土地が値下がりすると、担保としての価値も下がってしまいます。

その結果、銀行がさらに担保を要求したり、融資を断ったり(貸し渋り)、あるいは融資したお金をすぐに返すように要求する(貸しはがし)かもしれません。

また、銀行は融資先の企業の株などを保有していることがあります。これらの価値も下がってしまえば、銀行の体質自体が弱くなってしまいます。

そうなると、銀行(や信用金庫など)はそれだけでも融資を少なくしてしまうでしょう。そうなれば、資金を必要としている企業にお金が回らなくなってしまいます。

こうした理由もあって、日銀はリスク資産を買い取ったんですね。これは勉強になりました。

そして、今回こうした包括緩和を日銀があえて行った理由の一つは、アメリカのFRBが本格的な量的緩和に踏み切る可能性があったからだとのことです。

現在、アメリカの政策金利は0~0.25%と、事実上のゼロ金利政策をとっています。さらに量的緩和をすれば、ドルの金利もさらに下がります。

すると、ドルを持っている人は「こんな金利が低くなるのでは、ドルを売ってしまおう」と考えますので、ドルが売られて、ドル安(円高)になってしまいます。

そして、輸出主導の経済である日本は、円高の影響をまともに受けてしまいます。

そこで、日銀がゼロ金利や5兆円の資産買取を断行したんですね。円が市場に多く出回れば、理論上は供給が増えるので、円が下がり、円安に向かう要因となります。


キャリー取引

こうして行われた量的緩和策ですが、効果を疑問視する声も多いようです。なぜなら、たとえ金利が下がって企業などがお金を借りやすくなっても、そもそもお金を借りたい企業や個人がいなければ効果がないからです。

業績が好調で、設備投資や研究開発、あるいは従業員の数を増やしたいと考えている企業なら、金利が安くなれば金融機関から融資を受けるでしょう。

しかし、ただでさえ経営が苦しく、設備や従業員、店舗などのリストラクチャリング(事業再構築)を考えているような企業なら、お金を借りるどころではありません。

そこで、記事にあるように政府の対応も重要です。つまり、ポリシー・ミックス(経済政策を総合的に行うこと)が必要です。

まずは、補正予算を速やかに編成するのは不可欠です。民主党政権もねじれ国会になっているので難しいでしょうが、国民のためになるという視点から優先順位をつけた補正予算なら、世論を味方につけて難局を乗り切れるでしょう。

多くの国民も度重なる政局とそれに伴なう政治の空白にはうんざりしているでしょうから。

法人税減税も議論されています。減税する代わりに財源が必要だとする財務省は、研究開発費の優遇などを廃止するなどの主張をしているようです。

このあたりは難しいですが、大企業だけでなく日本企業の9割以上を占める中小企業を応援できるような税制が好ましいと思います。

最後に、円を借りて金などを買うというのは、「キャリー取引」と呼ばれます。通貨を借りると、利子を支払わなければなりません。しかし、ゼロ金利の円なら、外国人投資家などが円を借りても金利負担が非常に少なくて済むというわけです。

Pocket

サイトトップページへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)