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日銀の包括緩和 時間軸の解説

日銀の包括緩和 時間軸の解説

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(読売新聞10/10/8の「時間軸で長期金利下げ」から引用)

「時間軸」とは、聴き慣れない言葉だ:日本銀行はふだん、銀行同士が資金を貸し借りする際の短期金利を上げたり下げたりする金融調節を行っている。
(中略)この金融緩和をある条件を満たすまで続けることを宣言することで、金融緩和の効果を高めることを「時間軸効果」という。
日銀は今回、消費者物価指数の上昇率が1%になってデフレから脱却するまではゼロ金利政策を続けるという意味で使っている。
どのような効果があるのか:投資家や企業が「日銀が約束したのだから、しばらくの間は短期の金利は上がらない」と受け止めれば、長期金利も下がる。企業は設備投資をしたり、家計は住宅ローンを借りたりしやすくなり、景気を上向かせる効果が見込める。
なぜ長期金利が下がるのか:長期金利は「将来の短期金利がどうなるか」「物価がどう動くか」などと市場が予想することで決まる。
例えば、「今後10年間は金利が年1%より上がらない」と予想する人が増えれば、年1%の10年満期の長期国債は買った方が得になる。
国債を買う人が増えれば低い金利の国債でも売れるようになり、長期金利は下がることになる。
実際に、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは、4日は年0.935%だったが、日銀が包括緩和を発表後の6日には年0.840%に下がった。
(中略)日銀が「時間軸効果」を強調するのは、長期金利を直接コントロールできないからだ。
現在の長期金利は、米国などと比べて低水準にあるが、国債が増発され、日本の財政に対する不安が高まれば、満期になっても国債に投資したお金が戻らない恐れが出てくる。
日銀は、そうした市場の不安を抑える効果も見込んでいる。

(引用終わり)
私も金融政策における時間軸という言葉は初耳でしたので、勉強になりました。

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今回の時間軸とは、つまるところ消費者物価指数の上昇率が1%になるまでは実質ゼロ金利政策を続けますよ、とはっきり示すことで、金融緩和の効果を高めようということでしょう。

確かに、ゼロ金利にはしたけれどいつそれがまた引き上げられるかわからないということになれば、企業が設備投資や研究開発への投資をしたり、消費者が住宅ローンを組むなどの積極的な行動をとりづらくなります。

その点、デフレが続く中でちょっとインフレになるまでは続けますよと明示すれば、それまでは短期金利が低いままだと安心できます。

ちなみに、ゼロ金利というのは短期金利をそうするというだけで、日銀が長期金利を直接下げることはできません。

長期金利は、記事にあるように新発10年物国債を買う人が、どれくらいの金利で入札するかで決まります。

その国債が低い金利でもいいや、買おうという人が多ければ、低い金利で入札されるので、長期金利が下がります。

そして、国債を買おうとする人は、それよりもお得な運用先があればそっちを選びます。例えば銀行の定期預金などです。


なぜ金利が低いままか

しかし、今回のゼロ金利政策によって短期金利が下がれば、銀行の定期預金の利率も下がります。すると、それなら国債を買おうということになり、そういう人が増えれば国債が低い金利で応札されて、長期金利も下がるということです。

さらに、今回の包括緩和では、長期金利を下げるためにマネーサプライ(通貨の供給量を増やす)という対策も取られました。

実際に、新発長期国債の利回りが約0.1%下がったんですねー。ちなみに、やや話は変わりますが、最近では日本の債務残高があまりに多いので、財政破綻するのではないかという懸念の声がよく聞かれます。

そして、私も財政再建に取り組むべきだと思っているのですが、「それではなぜそんなに危ない日本国債の利回りが1%前後と、アメリカやイギリスなどに比べて低いのか」という疑問もあるようです。

つまり、国債というものは、その発行元である国を信用できれば利率が低くなり、信用できなければ高くなります。なぜなら、その国を信用できなければ、債務不履行(デフォルト)のリスクを国債購入者は負わなければなりません。

そうすると、国債を買おうとしている人は、その分高い利息をよこせ、と考えるからです。

そこで、借金まみれで危ないと噂される日本の国債が、なぜ低い利回り(すなわち信任されている)なのかという疑問が出るわけです。

その答えは、「日本は増税の余地があるから」だと言われています。


増税

現在、日本の消費税率は5%です。これは、ヨーロッパなどの諸外国に比べると低い水準です。そして、消費税を1%上げると、1.2兆円程度の税収アップになると言われています。

そこで、10年度の予算では赤字国債発行額が44兆円でしたが、財政のムダ削減や公務員の給与削減などを行ない、あわせて消費税も上げれば、赤字国債の発行をゼロにできるか、少なくともかなり少なくできるでしょう。

具体的には、25%くらいの税率が必要だという説が多いようです。

このように増税をすれば、借金の増加をストップできるか、少なくともほんの少しの増加で食い止めることができるだろうと考えられているので、日本の財政はまだ大丈夫だ、だから国債も大丈夫だというわけです。

これはなるほど、と思います。ただ、消費税を上げるということは、消費を確実に冷え込ませるでしょう。そのため、法人税や所得税(給料などが下がるので)の税収は減るかもしれません。

一方で、消費税は取りっぱぐれがないという大きなメリットがあります。誰でもモノやサービスを買うときには払わないといけないからです。

そのため、法人税などは今後どうなるかわかりませんが、消費税はいずれはアップせざるをえないだろうと思います(心情的には大反対ですが)。

というわけで、借金をたくさん抱えているにもかかわらず、大丈夫だろうということで日本国債は買われ続けているのです。そのため、金利も低いままで推移しています。


国債のデフォルト

最後に、国債の債務不履行(デフォルト)に対する市場の不安を抑える効果という点について。

先程述べたこととも関係しますが、日本国の債務残高は900兆円を超えました。先進国の中で最悪です。

そして借金が今後も増え続ければ、そのうち国が返済しきれなくなって、満期になっても償還されない(元本を払い戻してもらえない)かもしれない、という不安を多くの人が抱くでしょう。

つまり、国債を買うということは、その額面を国に貸しているということです。そして、満期まで利息がもらえ、満期になると元本も返済してもらえます。

しかし、国がもし国債を返し切れなくなると、債務不履行(デフォルト)になります。そうすると、国債を持っている人は、それが紙切れになるか、それに近い状態になってしまいます。

問題は、本当にデフォルトになるかどうかです。まず、デフォルトを起こさないために、国がハイパーインフレを起こすという考えがあります。そうだとしても、ほとんどデフォルトと同じことになります。

そして、借金が増えれば増えるほど、国債費(国債の償還と利払いに充てるお金)が増えていきます。現在は20兆円程度ですが、もし国債は危ないということになれば、利回りが上がって、国債費も急増します。

そうなれば、いよいよデフォルトの可能性が出てくると思います。まあ、日本はまだ消費税を上げる余地もありますから当面は大丈夫でしょう。ただ、消費税を大きく上げて、社会保障などを削ったときに、国民がそれに耐えられるかどうかは疑問でもあります。

それはさておき、日銀が長期金利を下げようとすれば、国債の利回りが上がりづらくなるということです。それは国債費の増加を防ぎ、国債の信頼性を保つことにつながるということでしょう。

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