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為替デリバティブを使ったヘッジの方法と中小企業への特例融資

為替デリバティブを使ったヘッジの方法と中小企業への特例融資

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(日本経済新聞11/1/19から引用)

三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンクは、為替デリバティブ(金融派生商品)で多額の損失を抱えた中小企業の資金繰り融資に乗り出す。
金融庁の行政指導を受けた措置で、毎期計上する損失の穴埋め資金や、取引の途中解約の違約金に充てる資金を融資する。
予想を超えた円高が背景にあるが、ルールを超えた過剰支援につながりかねず、金融規律をゆがめる恐れもある。
(中略)本業は堅調でも(為替デリバティブによる)損失で倒産に追い込まれる企業が出始めたことで、同庁は取り扱いの多い3メガに対して今の法令の枠内で可能な対応策をとるよう求めた。
元本割れリスクのある金融商品を買った顧客が損失を出したとき、販売した金融機関が顧客の損失を肩代わりする行為は「損失補填」と呼ばれ、金融商品取引法で禁じられている。
為替デリバティブによる損害も対象で、銀行は単純に損失を肩代わりできない。
このため3メガ銀は、本業は健全だが損失が大きい企業に、新規融資の形で資金供給することにした。
為替デリバティブ契約をした中小企業は毎月数千万円の差損を出し、解約にも2~3億円の違約金がかかるケースが多い。
途中解約を望む企業には、柔軟に解約に応じ、その違約金を融資する方針だ。
(中略)支援対象となる中小企業の数は各行数百から数千社にのぼるとみられる。
為替デリバティブとは:輸出入をしている企業が相場変動に伴う為替リスクを抑えるために、あらかじめ一定の価格で外貨を売ったり、買ったりしておくための契約。
例えば輸入企業が長期的にみて円安・ドル高基調が続くと予想した場合、足元の相場より円高水準でドルを買える取引をしておけば、ドルの調達コストは実際の相場よりも割安になる。
それとは逆に予想に反して円高が進めば、調達コストは割高になる。
銀行は企業と為替デリバティブ契約を結ぶとき、自らが為替変動リスクを負うのを避けるために反対の売買をしている。このため簡単には解約できず違約金も高額になるケースが多い。

なかなか考えさせられる事案でした。まずは解説から。


○なぜ為替デリバティブを使うのか

まず、なぜ輸出入企業が為替デリバティブを利用するのかです。例えば輸入企業の場合、円高になるとお得で、円安になると困ります。

なぜなら、円が高いということは、少しの円を払えば商品などを仕入れることができるからです。

例えば、アメリカから商品を仕入れている企業だとします。1ドル=100円だった相場レートが円高になり、1ドル=80円になりました。すると、これまでは10ドルの商品を仕入れるのに1000円必要だったのが、円高になると800円で済むのです。

そのため、輸入企業にとっては円高はありがたいのです。最近の円高で、お店で円高還元セールが行われているのもそのためです。

逆に、レートが円安になり、100円から120円になると、1000円を払えばよかったのが、1200円も必要になってしまいます。

ちなみに輸出企業の場合は逆で、円高だと困り、円安だと有利です。

このように輸出入をする企業にとっては、為替レートは文字通り命運を左右するものなのです。

すると、企業には2つの選択肢しかありません。特別な対策を取らないか、デリバティブなどを使って為替ヘッジをするかです。

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○対策を取らない場合

第一の対策を取らないというのも、悪いわけではありません。まず、デリバティブを利用するための費用が要りません。

また、前掲の輸入企業で言えば、円安になれば困りますが、円高になれば有利になります。つまり対策を取らないと、レートによって損も得も出るということになり、長い目で見ればトントンかそれに近くなるかも知れないからです。

とはいえ、それでは不利な円安が続いたら経営ピンチになってしまうかもしれません。

そこで、やはり費用と手間はかかっても、デリバティブなどを使って為替ヘッジをしようということになります。私も正しいやり方であれば、ヘッジをしたほうがよいと思います。


○具体的な方法

それでは具体的にはどのような方法でリスクヘッジするのでしょうか。

やはりデリバティブを利用するのが一般的で、かつ使いやすいと思います。具体的には、先物為替予約、通貨オプション、為替スワップ取引を利用することになります。


○先物為替予約

先物為替予約とは、将来のある時点の通貨を、売買するものです。

例えば輸入企業が、今から3ヶ月後のドル/円を1ドル=100円でドル買い(円売り)すれば、3ヶ月後(決済期日)に1ドルが150円になろうが50円になろうが、1ドル=100円で固定できたことになるのです(間違っていたらコメントでお知らせ下さい)。

輸出企業ならドルが下がる(円が上がる)と困るので、ドルを売って円を買います。

なぜそうなるのかはここでは省略しますが、先物取引を使えば、将来のレートがどうなろうと、その時の先物のレートで固定できるのです。


○通貨オプション

次に通貨オプションとは、通貨をある金額で一定の期間内に、売買できる権利を売買するものです。今回の為替デリバティブはこれが多かったようですね。

例えば1ドル=100円の時点で、輸出企業が円高になると困ると思い、2ヶ月後までに1ドル=100円でドルを売るプットオプション契約をしたとします。つまり、ドルを売る権利を買ったわけです。

その後、2ヶ月経って1ドル=80円になっていました。かなりの円高です。しかし、さきほどのオプション契約によって、この輸出企業はこのオプションを行使する(あるいはこのプットオプションを売る)ことで、現在のレートがいくらであれ、1ドル=100円でドルを売ることができます。

つまり、本業の方では円高ドル安によって、輸出によって得られるドルが目減りしてしまったのですが、オプション取引によって差益が出るので、その分を相殺できるというわけです。

なお、オプション取引は権利を買うときに、権利を売る人にプレミアムという手数料のようなものを払わないといけません。そうしたコストは掛かりますが、ヘッジをしないよりはるかに安全安心なわけです。

最後の為替スワップは、先物と同じようなものといえます。


○将来のレートを固定できる

こうした為替デリバティブを活用すれば、将来のレートを固定する効果が得られます。

つまり、例えば円高になると困る輸出企業が、1ドル=80円や90円になってしまったら困るけれど、100円なら大丈夫というなら、100円の時点でデリバティブを使えば、将来のある時点でのレートが1ドル=80円や60円になっていても、1ドル=100円で固定したことになるのです。


○自分でデリバティブを利用するには

なお、デリバティブを使うのは、個人や法人が正しい知識を持った上で、証券会社などを使って直接利用するのが私はよいと思っています。ただ、なかなか実際にそうしたデリバティブを扱っている業者は少ないのが実情です。

そこで、記事にある中小企業も銀行を利用したのだと思います。

個人や会社が直接デリバティブを使って為替ヘッジするには、例えばkakaku FXなどがオプション取引を扱っています

ただしオプション取引などのデリバティブは複雑な取引なので、よく理解なさった上でご利用されることをおすすめします。

また、ヘッジ目的の取引なので、レバレッジは1倍(例えば100万円の証拠金で100万円分の取引をする)か、ごく低めにしましょう。

次に、銀行とデリバティブ契約を結ぶ際に、銀行が反対の売買をしているという点について。これは私も初めて知りました。

簡単に解約ができず、高額の違約金が生じてしまうという点については、疑問を感じます。これも、私がデリバティブによる為替ヘッジは自分で行ったほうがよいと考える理由です。


○特例融資には反対だと思っていたが

さて今回、金融庁の指導によって、銀行がデリバティブによる損失を負った企業に特例融資をするという件ですが、私も反対でした。

今回の件は、記事にあるように円安だった頃に、これ以上円安になると困るというわけで、輸入企業がデリバティブを契約したのです。

しかし、例えば1ドル=120円のときに、100円で為替予約をして、その後円高になって損が出るというのはしかたのないことです。

なぜなら、100円で固定するのがデリバティブの目的だからです。円安の時には差益が出て、円高のときには差損が出るのは当然のことです。

そして、今回のように1ドル=80円近くという円高になっても、前述の企業はデリバティブでは損が出ますが、本業では円高による恩恵を受けられるのですから、損失補填のようなことをするのはおかしいです。


○契約に問題があった?

ただ、週刊ダイヤモンドの記事によれば、通貨オプションで問題のある契約内容を銀行と顧客とが結んでいたとのことです。

上記サイトを見ますと、円高のときに顧客が不利になる契約内容です。

これはおかしいですね。自分で正しくデリバティブを使えば、こんなことにはならないのですが…。

私もデリバティブを正しく使えば、レートを固定できて得にも損にもならないはずですから、それで企業が倒産するのはおかしいと思っていたのですが、銀行との契約に問題があったんですね。

私も日本経済新聞の意見と同じく、投資は自己責任ですからデリバティブで損失を被ってもそれは自己責任であり、損失補填に代わる特例融資はおかしいと思っていました。

しかし、週刊ダイヤモンドに紹介されているような、為替レートが予想と逆に動いたときに、企業の損失が大きくなってしまうような契約が多かったのだとすれば、これは問題があります。

引用記事にあるように、07年9月の金融商品取引法が全面施行されるまでは、今よりも銀行による金融商品の説明などが足りなかったこともあったのかもしれません。

こうした事情があったのなら、投資は自己責任とはいえ、為替デリバティブによる損失を被ってしまった企業を救済するために、特別な融資をするのも必要だと思います。


○自分で為替ヘッジをするには

最後に、こうしたデリバティブを使うことで為替ヘッジを行うにはどうすればよいか、その注意点などを書きます。

第一に、デリバティブの仕組みをしっかり理解する必要があります。先物やオプション取引などは複雑なものなので、不安がなくなるまで勉強されることをおすすめします。

なお、オプションは損失を限定するためにとても優れた仕組みだと思いますが、先物よりも複雑なので、まずは為替先物予約から入ったほうがよいと思います。

為替先物予約を扱っている証券会社は検索した限りでは見つかりませんでしたが、銀行などでは例えば以下のところが扱っているそうです。

四国銀行
みちのく銀行
紀陽銀行

第二に、為替ヘッジはご自分の判断で、ご自分の手でなさることをおすすめします。

第三に、ヘッジ取引で利益を出そうとしないことです。為替ヘッジの目的はあるレートで固定して、そこから円高になろうが円安になろうが得も損もしない、ということにあるのです。

例えば輸入企業であれば、為替ヘッジをすることで、円高になれば本業が有利になる一方、デリバティブでは損が出ます。円安になれば本業で不利になる一方、デリバティブで差益が出てそれを補えます。

このように得も損もしないのがヘッジの目的なので、ついでに利益を出そうとするのは止めておくべきでしょう。

第四に、レバレッジは最大1倍にします。例えば輸入企業が1万ドル分の取引を為替ヘッジしたいなら、デリバティブでの取引も1万ドルにする、つまりレバレッジを1倍にします。

この倍率を増やすと、うまくすればヘッジ以外に売買差益も見込めるのですが、失敗すれば損が出てしまうからです。

第五に、為替レートの動きを常に把握しておくことです。そうすれば、「だんだん円安になってきたな」というような相場の動きに敏感になるので、早めに手を打つことができます。

なお、私の運営するサイトでFXを利用した為替ヘッジの方法をご紹介しています。FXは取扱い業者が多く、手数料も安いので利用しやすいと思います。参考になさってください。

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