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アメリカの追加緩和の観測が強まる

アメリカの追加緩和の観測が強まる

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(日本経済新聞10/10/9から引用)

米国で追加の金融緩和が11月初めに決まるとの観測が強まっている。景気の厳しさを改めて示した9月の雇用統計を受け、米連邦準備理事会(FRB)は対応策の検討を急ぐ。
米国の金融緩和は一層の円高・ドル安を招く要因となる見通しだ。(中略)
米国では追加の金融緩和をめぐって具体策が視野に入ってきた。長期国債などの購入を通じてFRBの保有資産を拡大し、市場への資金供給を厚くする案が再浮上。
また、FRBの物価上昇率の目安を一時的に引き上げ、デフレの心理に傾くのをけん制する手法に効果を認める声も出ている。
(中略)追加の緩和策をめぐり、中長期国債などの購入で資金供給量を増やす「量的緩和」の拡大が第一の焦点だ。
FRBは2009年3月に最大3000億ドルの長期国債の購入を発表した。この時と同様に数千億ドル以上の大規模な資産購入を決めたり、購入規模を徐々に高めたりする案が出ている。
為替問題を巡る主要国の神経戦が続いている。人民元の上昇を求める米欧と、外圧をかわしたい中国。そのはざまで円売り介入を再開できない日本。
そして先進国の金融緩和競争が自国通貨上昇の原因と批判する新興国。(中略)
「効果的な多国間協議のメカニズムが必要だ」。ガイトナー米財務長官は人民元の上昇を中国に促すため、先進国の結束を固めたい考えだ。
(中略)背景には米経済の回復の遅れがある。米議会は11月の中間選挙を控え、対中強硬姿勢を強める。オバマ米政権も一定の配慮を示さざるをえない。
(中略)中国は米欧との全面対決を望んではいない。人民元の対ドル相場は8日に上昇した。介入を手控えて元高方向にそろり修正することで、米欧の批判を和らげたいという思惑が透けて見える。
新興国と先進国の対立も鮮明になってきた。(中略)先進国の金融緩和でだぶついたマネーが新興国に流れ、自国通貨を押し上げる―。不満を強める新興国は為替介入や資本規制に流れがちだ。
レアル高にあえぐブラジルは、海外から国内への金融投資にかかる「金融取引税」の税率を、債券投資に限って2倍の4%に引き上げた。

(以下略、引用終わり)
景気がなかなか上向かないアメリカが、追加金融緩和策をとるのでは、という記事です。実際、この記事にあるように11月、6000億ドル(約48兆円)の国債を買い取る決定がされました。

まず、こうした緩和策の狙いについて。アメリカの中央銀行であるFRBが、市中銀行などから米国国債を買い入れます。そうすると、その代金であるドルが市場に放出されます。

つまり、世の中に出回るドルの量が増えるので、為替相場でのドルが安くなります。

ドル安(日本では円高)になれば、アメリカの輸出産業が獲得する外貨の価値が高くなるので、アメリカ経済にとって有利というわけです。

また、国内の景気が停滞すれば、デフレになりやすくなります。デフレになると、それが悪循環になってさらに景気を悪くするデフレスパイラルにつながりかねません。

そのため、リフレーション(物価を少しインフレに持っていくこと)を狙って、物価上昇率の目安を引き上げたのです。

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通貨安競争

記事には09年の量的緩和策が紹介されています。その額は最大3000億ドルでしたが、今回はその倍ですからすごいですね。

この米国の緩和策の日本への影響ですが、理論上は円高の要因になります。日銀が先日決定、実施した包括緩和策は5兆円規模でしたから、アメリカと規模が違うからです。

なお、前述したように輸出による利益を増やすためにアメリカは緩和策をとったのですが、もう一つ理由があるかもしれません。それは、アメリカ国内の景気が悪いと、どうしても国内の需要を喚起することが難しいからです。

国民が財布のひもを固く縛ってしまいます。そこで、どうしても輸出で稼がないといけないという事情があったのでしょう。

こういった事情は多くの国で共通しています。そのため、各国の通貨安競争が繰り広げられています。日本も輸出主導の経済ですから円安がよいのですが、逆に円高になってしまっています。

先日の円売り為替介入も単独介入(日本だけの介入)だったために、効果が乏しかったようです。

なお、円が買われて円高になるということは、日本経済が信用されているということです。


なぜ円が買われるか

そこで、ひとつの疑問が生じます。日本は巨額の累積赤字(借金)を抱えており、海外投資家から国債のデフォルト(債務不履行)まで懸念されている。

それなのになぜ円が買われるのか、ということです。

その答えは、日本はまだ徴税権を行使して税収を上げる余地がある、つまり消費税などを上げて借金を減らせると見られているからです。

先進国などの消費税や付加価値税は15から25%程度の税率も多いのに対して、日本は5%です。

そこで、もっと消費税を上げれば借金は返せるだろうと考えられているのです。


人民元の切り上げ

次に人民元のお話です。中国は近年、急速な経済発展を遂げています。その大きな理由は、人件費が先進国よりも遥かに安いために、日本やアメリカなどの企業の生産拠点などが中国に移ったからです。

ただ、最近は賃上げストライキが頻発し、人件費が上がってきているようですが。

さて、人民元は以前は管理変動相場制を採っていたのですが、08年夏に金融危機への対応のためにドルペッグ制(固定相場制)に変更しました。

その後、米欧などから元は安すぎるという批判を受けて、少しずつ元を高くしてきた(人民元の切り上げ)ですが、それでも米欧では不十分との不満が強いそうです(参考:日本経済新聞10/10/8)。


元安が求められる理由

なぜ人民元が安すぎる批判が諸外国からなされているのでしょうか。それは、中国と貿易をしたときに、自国にとって不利だからです。

例えばアメリカと中国の貿易で考えてみましょう。中国はアメリカに輸出して、ドルを稼ぎます。そして為替相場が元安ドル高なら、中国は価値の高いドルを得ることができます。

一方の米国は、輸出で価値の低い元を得ることになるので、損です。

このように、人民元が安すぎることは、対中貿易をする国にとっては不利なのです。

そのために、各国は中国に元を高くする(切り上げ)ように求めているのです。

ちなみに、日本も太平洋戦争敗戦後、しばらくは1ドル=360円という固定相場制でした。このレートは日本の輸出にとってはとても有利でした。そこに朝鮮戦争による特需などが重なり、日本は高度経済成長を遂げたのです。

さて、中国もこうした外国からの批判は重々承知していますが、かといって自国経済に有利な人民元安を変えたくありません。そのため人民元の切り上げに消極的なのです。

こうした中国に対して、ガイトナー米財務長官は先進国で強調して、もっと元を高くするように求めています。

その背景にはアメリカ議会の中間選挙もあったんですね。ちなみに中間選挙は民主党の歴史的大敗という結果でした。その責任はオバマ大統領にあるという声も多いようですね。

ただ、オバマ大統領も就任してまだ2年。アメリカ経済の不調はサブプライムローンに端を発したリーマンショックの影響が大きいでしょうから、オバマさんだけに責めを負わせるのも気の毒な気もするのですが。

医療保険制度改革も、私はよい政策だったと思います。アメリカが市場原理を旨とするのはわかりますが、保険という分野は保険会社が自社にとって不利な人は加入させない「チェリー・ピッキング」などの問題があります

そのため、医療保険については国の関与も必要だと思うのです。ただ、雇用が上向いていないなどの問題があるそうなので、オバマ政権も正念場です。

さて、中国人民銀行の副総裁が、変動相場制への以降は段階的になるだろうと語ったそうです。つまり、当面は変動相場制にはしませんよということです。一方で、少しは元高に持って行っているようです。


新興国の抱える不満

次に新興国が先進国の金融緩和競争に不満を抱いている点について。アメリカやEU諸国などが自国やユーロの価値を下げるために為替介入をした上で非不胎化(介入で市場に放出した資金を回収しないこと)したり、景気を上向かせるために金利を下げたりすれば、それによって余ったお金が運用先を求めて新興国に流れ込みます。

グローバル経済はややこしいですね。そしてその投資マネーが新興国の通貨を押し上げてしまうというのです。

なぜなら、例えばドルやユーロがある新興国にたくさん入ってくれば、その国の通貨の量が相対的に少なくなるからです。そうなれば、その国の輸出が不振になります。

そこで、新興国は規制を強めたりします。記事にはブラジルが金融取引税を上げた例が挙げてあります。これは日本の投資家にとっても関係のあるニュースでした。

なぜなら、日本で人気だったブラジル債券やその投資信託のコストが上がってしまったからです。

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