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日本で「貯蓄から投資へ」が進まないこれだけの理由

日本で「貯蓄から投資へ」が進まないこれだけの理由

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(日本経済新聞10/10/21から引用)(10月4日は投資の日で)今年も全国各地で様々なイベントが開催されている。
そのキーワードは「貯蓄から投資へ」で、諸外国、特に米国に比べて低い個人金融資産に占める有価証券比率の向上が目標に挙げられている。
政府もまた、日本経済の発展、企業の成長を支えるにはリスクマネーの円滑な供給が必要であるとして「貯蓄から投資へ」の流れを加速することを政策課題に挙げている。
(中略)その一方で、株式市場の過去を振り返ると、この20年間の日経平均株価(9月末)時点は約55%の下落、10年間では約40%の下落であった。
非常に長い時間をかけてリスクにチャレンジしても、結果は実に貧しいものでしかなかった。この事実に、個人投資家は株式投資に二の足を踏みがちである。
多くの企業が低収益率を改善できないまま今日に至っていることが、株価低迷の主因であると指摘する声が多い。
(中略)もうひとつの問題点は、投資信託の実態が特異なことである。純資産ランキングの上位をみると、外国債券など海外市場を投資対象とするファンドのオンパレードである。
投資対象を国内証券としているのは、資産規模上位50ファンドの中でも数本しかない。しかもこうしたファンドの多くは順位が低く、存在感は著しく乏しい。
投資信託を購入する個人投資家は、海外投資に関心が強いようである。この事実は、投資信託残高が増加すれば日本経済のパワーアップにつながるともくろむ政策とはミスマッチの状態である。
(中略)官民一体で「貯蓄から投資へ」を推進すべしとの声が多い。であるならば、投資家が報われる株式市場の実現を最優先課題にすべきではないだろうか。

約1年前の記事ですが、面白い内容です。まず、10月4日が投資の日とは知りませんでした。もちろん語呂合わせからです。

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「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズは以前からよく聞きます。アメリカの国民は株式などの有価証券の比率が高いとはよく言われます。

そして、日本ももっと株式や社債などを購入して、企業に投資するようにしましょうというわけです。たしかにそうなれば、企業も資金調達がしやすくなって、事業拡大を図りやすくなるというわけです。

ただ、実際に国民がもっと積極的に投資を行うようになるには、高いハードルがいくつもあるように思います。


株式市場の低迷

まずは、やはり日本の株式市場の低迷が原因でしょう。20年で日経平均株価が55%も下落したんですね。20年前というとちょうどバブルが崩壊したころです。

バブルの時は日経平均が3万円を超えましたから、今からは考えられません。こうした株価の下落を見ていると、確かに「株は怖い」と多くの人が思って、株式投資を手控える気持ちがよくわかります。

それではなぜ株価が上がらないか、その理由を私なりに考えてみます。第一に、バブル崩壊の後遺症が大きかったことです。バブル経済で舞い上がっていた頃、銀行は企業に頼んででもお金を借りてもらい、企業や個人もそのお金で株や不動産などに投資(というか投機)をしました。

それが一気に弾けてしまったので、財テクに走っていた企業や個人には大きな借金が残り、銀行など金融機関は不良債権の処理に追われました。いわゆる「失われた十年」です。

ただ、不良債権処理も終わって、日本経済もそろそろ上向いて来てもよさそうなものです。ということで他の理由を考えます。


新興国の台頭

第二に、新興国の台頭によって競争が激しくなりました。つい最近もパナソニックがテレビ事業から撤退し、決算も黒字見通しが一転4200億円の赤字に転落しそうだと報じられています。

中国や韓国などが自動車や家電などで安い製品を販売し、日本企業との激しい価格競争になっています。

日本企業もグローバル経済の中で勝ち抜くために、工場などを海外に移しています。日本で製造すると、人件費や土地代などのコストが高いからです。

その結果、国内では雇用が減り、工場建設などによって生まれる仕事も減っています。仕事が減れば求人も給料も減りますから、国内で消費(内需)が伸びないということになってしまいます。

いわば産業の空洞化です。人々が使えるお金が減るので、内需が増えず、株価も上がらないというわけです。また、お金が減るということは株を買うのも難しくなり、これも株価が上がらない原因です。


超円高と欧州債務危機

第三に、超円高です。2009年にユーロ加盟国のギリシャで隠れ債務が明るみに出て、ヨーロッパを大きく揺るがしています。ヨーロという共通通貨の信用は下がり、ユーロ圏の他の債務の多い国(スペイン、イタリアなど)は大丈夫なのかという懸念も広がっています。

その結果、ユーロは危ないからもっと安全な資産を買おうと、機関投資家や個人投資家が選んだ投資先の一つが、日本円だったのです。

円は大きく買われ、75円台前半まで上がりました。11/10/31に日銀が円売りドル買いの為替介入をしましたが、これで円高が止まるかどうかは予断を許しません。

円高になると、輸出で稼いでいる日本企業の売上が目減りします。それは結局、収益の悪化につながり、株価を押し下げます。


深刻化する日本の財政問題

第四に、日本の財政問題です。日本の国と地方の長期債務残高は約900兆円です。おまけに借金は毎年40兆円以上増えています。

このまま財政悪化を放置していると、国債の買い手がいなくなるか少なくなって、金利が急騰する懸念があります。すると、前述の欧州債務危機のように、日本の銀行などには既発国債の価値が下がることで損失が発生し、金融が混乱する可能性があります。

また、金利が上がると国債利払い費も増えて、国の予算をさらに圧迫します。すると、まともな予算が組めなくなり、政治機能が停滞したりストップする危険があります。

このように財政問題は本当に悩ましいものなのですが、これを聞いただけで国民の多くは、「国は頼りにならないから貯蓄しよう」と考えるでしょう。少なくとも私はそうです。

さらに、公的年金、医療、介護といった社会保障制度も破綻が心配されています。若い世代は本当に年金がもらえるのかと疑心暗鬼になっていますし、その心配は正しいと思います。

また、近い将来年金をもらう世代も、厚生年金の支給開始年齢を下げようという話も出ていますから、本当に年金だけで暮らしていけるのか、定年退職後年金をもらえるまでどうすればいいんだと心配になるはずです。

このように国民の安心を支えるべき社会保障が信用できなくなれば、国民はお金をなるべく使わないようにして、貯蓄します。

ということは、消費も減りますし、企業への投資も減ります。そして消費が減れば、企業も収益を上げられませんから株価が下がるというわけです。

ちなみに日本経済がデフレから脱却できない主な原因もここにあると、私は思っています。

他にも原因はあるでしょうが、日本株の株価が上がらない原因はざっとこんなところだと思います。

こうして考えると、財政問題だけでも解決するのはとても難しいことがわかります。私は歳出削減と増税をして、増えた税収を社会保障の整備に充てるべきだと考えていますが、当の政治家が「選挙に負ける」からと及び腰なのですから。

そういうわけで、日本企業の株価を大きく上げるのは正直なところ難しそうですね。ただ、個別銘柄で割安なものをうまく見つけられれば、値上がり益を得られるチャンスもたくさんあるはずです。

まあ、こんな調子では政府が国民に「貯蓄から投資へ」と叫んだところで、問題が解決しない限りは投資へのシフトはしないだろうと思います。


投資信託でも国内は不人気

引用記事では投資信託についても指摘されていますね。投資信託でも国内株と外国株に分散するようなものには、もちろん日本株が入っていますが、そうしたものは少数派のようです。

国内投資家に海外の国債などの人気が高いのは、仕方ないと思います。なにしろ私も同意見ですから。

前述のように日本の将来は(このまま放置すれば)暗く、安全と言われる日本国債も本当に償還されるのは疑問です。

となれば、日本の株式や債券に投資する人は当然少なくなるでしょう。

そうすると、財政や経済が日本よりよい海外に眼を向けるようになるのも当然です。

そして、リーマンショックでもわかるように株式投資はリスクが高いと思えば、リスクの低い債券などが人気が出るでしょう。

なお、ヨーロッパでギリシャ国債などを保有していた銀行が解体されるなどの事態も起きていますが、国債イコール危険というわけではありません。

たとえばイギリスはユーロには加盟していませんし、日本よりははるかに財政が安全です。こうした国の、できるだけ短期の国債ならそんなにリスクは高くないと思います。

償還期まで保有し続ければ、きちんと元本と利息がもらえるからです。

少なくとも、日本の投資家も日本株や国内に投資する投資信託にはあまり興味がないようで、確かにこれでは国民に投資をしてもらって経済を元気にしようという政府の目論見は外れています。

思うに、政府が無為無策のまま、国民にリスクのある投資をしてもらおうというのは虫がよすぎる話です。

たとえば株式や商品(コモディティー)、通貨、デリバティブといった金融商品を一つの取引所で取引できる「総合取引所」構想は進んでいません。縦割り行政の弊害で、各省庁が縄張り争いをしているからだとも聞いています。

それから、金融商品の損益通算も店頭FXと各種先物取引とがやっと通算できるようになったくらいで、あとは進んでいません。

こんなことで投資家が投資を増やすでしょうか? かたやアジアの金融センターを目指しているシンガポールは、いろいろと税制が優遇されていると聞きます。

日本の未来は大丈夫かと危ぶんでしまいます。

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