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アメリカの2時間にかけるトレーダー

アメリカの2時間にかけるトレーダー

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(読売新聞10/9/15のウォールストリート・ジャーナルの記事から引用)
「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれた、誤発注による株価暴落が株式市場を直撃、混乱がニューヨーク証券取引所(NYSE)の立会い所を襲ったその日、「ブライアンゲート・トレーディング」の創設者たちは映画館にいた。

リック・オシャーとスティーブン・ルービンシュタインの両氏は、さぼっていたのではない。ブライアゲートは、NYSEで売買を仲介するスペシャリスト(値付け業者)だった2人が2008年に設立した私設取引を扱う会社で、活動するのはもっぱら、市場の取引開始時と終了時だ。

その間の時間は市場の動きもたいてい鈍る。(ウォール街のベテラン2人は、テニスをしたり、昼食を楽しんだり、子供たちの学校を訪ねたりと、ゆったりした時間を楽しむ)。

(中略)6時間半の取引時間の間に長い休憩を取る会社はブライアゲートだけではない。取引はますます、開始直後と終了間際の1時間に集中するようになっているのだ。

この2時間の出来高は、米系調査会社トムソン・ロイターのデータ分析によると今や一日の半分以上を占める。(中略)アナリストは、コンピューターのアルゴリズムを用いて大量取引を実行する高頻度取引の増加が、一日の始まりと終りへの取引集中に拍車をかけていると指摘する。

最初の1時間の取引が多いのは、前日の取引終了以降の、個人投資家と仲買人による注文の蓄積があることなどによるとされる。一方、株価指数を慎重に見守る機関投資家は、しばしば最後の一時間まで取引を行うのを待つ。

取引時間を絞り込むことで利益も制限されるが、両氏は納得済みだ。(中略)オシャー氏も「金がすべてではない」と言い切る。

(引き続き引用)自動売買の登場で、注文の流れを見て指示を出す人の重要性は薄れていった。

(中略)ブライアゲートは取引にコンピューターのアルゴリズムを用いるが、そこではまだ、人間の意思決定が必要とされている。

オシャー氏によると、同社は自己資金だけで取引することでリスクを回避しており、利益や損失が一定の限度を超えることはないという。市場が急変しがちな時は帳簿を締めるため、5月6日のフラッシュ・クラッシュによる損失もなかったという。

ただ、2人とも、自分たちの自由ははかないものだと感じている。取引は例外なくリスクを伴うためだ。(引用終わり)

アメリカのトレーダーの実情を教えてくれる、貴重な記事でした。まず、フラッシュクラッシュというのは今年の5月に起きた、NY市場での株価暴落です。

その大きな原因となったのが、コンピュータープログラムによる自動売買だと言われています。プログラムはたいてい、ある程度株価が下がると自動的に損切りをするように設定されています。

今回の場合は誤発注により株価が下がり、それに反応して多くのプログラムが一斉に売りを出しました。それがさらに売りを呼んだことで、暴落になったそうです。

そのため、高速売買に規制をかけようという動きもあることは以前に書きました。


私設取引

さて、今回登場する2人のトレーダーは、以前は値付け業者でした。これに関しては詳しくないので調べたところ、トレーダーズショップによると「店頭市場(OTC)において秩序ある市場を形成する責務を担い、個別銘柄の売買にいつでも応じる用意のあるトレーダー」とのことです。

ということは売買数の少ない銘柄でも、こうした値付け業者がいることで売買しやすくなりますね。しかし、コンピューターを駆使した自動売買が増えたことで、値付け業者なしでも流動性が高まり、その重要性が薄れてしまったのでしょう。

というわけでお二人が設立したのが、私設取引を扱う会社です。日本でも最近、市場を通さないで売買するPTSが盛んになっています。

ちなみにPTSについては、私は特に使う必要はないと思っています。ただ、夜間にも取引できるので、アメリカ市場の動向を見て取引できるなどのメリットがあるのでしょう。


2時間だけの取引

さて、2人のトレーダーが取引をするのは6時間半の取引時間のうち、取引開始後と終了間際のそれぞれ1時間だけ。そして残りの時間はゆったりとプライベートを楽しんでいるんですね。これには驚きました。

トレーダーというと、ザラバ中ずっとパソコンとにらめっこというイメージがありましたが、お二人はまったく違いますね。つまり、出来高の多い2時間だけに絞って取引しているんですね。

ちなみに開始直後と終了間際に取引量が多いのは、日本でも同じだと思います。


売買が集中する時間帯

日本の場合でも、前場の始めは前日の終値を見て注文を入れる投資家が多いですから、出来高が多いです。そして、さらに寄り付きの株価を見てデイトレーダーが売買したりもしますので、やはりその後しばらくは出来高が増えます。


一方後場の終わり近くになると、デイトレーダーが取引時間内に反対注文を出してポジションをゼロにします。それによって出来高が増えますので、それを見極めて注文を入れようという投資家もいます。

また、デイトレーダーでなくても、その日のなるべく有利な価格で保有株を売りたいと考えている投資家などは、やはりこの時間帯に注文が多くなります。

そして、NY証券取引所では特に、コンピューターの高頻度取引がこれに拍車をかけて、さらに上記の時間帯の注文が多くなっているようです。

プログラムによる自動売買は、だいたい内容が似通っていますので、どうしても株価にせよ注文を入れる時間帯にせよ、極端になりがちです。その実例といえます。

さて、両氏も取引を2時間だけに絞れば、取引量が減り、利益を出すチャンスも減ります。それでもお二人はお金がすべてではないと考え、テニスやゴルフなどの私生活を優先しています。

なんとも優雅な生活でうらやましいですね! どうもこの記事を読んで、プロのトレーダーに対するイメージが変わりました。

次に、同社は自己資金だけで運用しているそうです。これは重要な点ですね。つまりレバレッジを効かせていないということです。


レバレッジを高くしない

お二人はベテランのトレーダーですから、レバレッジを効かせて大儲けしようと思えばできるでしょう。しかし、あえてそれをせず、利益や損失が一定の限度を超えることはないそうです。

ここに生き馬の目を抜く株式市場で生き抜いてきたトレーダーの経験を感じます。おそらく彼らはレバレッジを効かせすぎて大きな損失を被り、脱落していった同業者をたくさん見てきたのではないでしょうか。

過去には大手ヘッジファンドが、レバレッジを高くしすぎて破綻してしまった例もあります。私も株式投資はレバレッジを高くせずに、安全第一で行ったほうがよいと思っていますが、まさに我が意を得たりです。

そして、レバレッジを低くして損失を限定しているからこそ、彼らは私生活を心置きなく楽しめているのではないでしょうか。

ウォールストリートというと、お金がすべての非情な競争社会という印象を持ちます。しかし、この記事のオシャーさんとルービンシュタインさんはそれとは全く違う感じですね。

値付け業者として20年市場に立ってきたのに、コンピューター取引の台頭で行き詰まりを感じ、自分たちで会社を作ったお二人。そして私生活を楽しむ人生を彼らが送れている理由の一つは、取引のリスクを知り抜いているからこそ、危険な取引をせずにいるからではないかと思いました。

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