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公的年金の積立金を新興国株で運用

公的年金の積立金を新興国株で運用

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(日本経済新聞10/10/11から引用)

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、中国、インドなど新興国市場に上場する企業の株式に投資対象を拡大する方針を固めた。
2011年夏をめどに、現在は先進国企業に原則限定している外国株投資枠の資金を配分し、実際に投資を始める。
年金給付額の拡大に対応するために、新興国投資のノウハウ蓄積を進める狙い。
GPIFは年金福祉事業団を改組した年金資金運用基金から公的年金の積立金の運用・管理業務を引き継いだ。
10年6月末で、公的年金積立金のうち約117兆円を運用している。運用資産(117兆円)のうち約7割を国債など国内債券が占め、約9%を外国株式で運用している。
「管理運用方針」と呼ぶ運用規則では、現在外国株式の運用対象を原則として約20カ国の先進国の企業に限定している。
今回、この規則を見なおして、外国株式の運用対象に、新興国の株式市場に上場する企業の株式へ投資する枠を新設する。
投資対象はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)のほか南アフリカ、メキシコなどの株式市場に上場する企業も加える考えだ。
GPIFは、新興国企業の株式投資を委託する運用会社を12月上旬までに公募し、来年6月にも決定する。新興国企業の財務状況などを分析できる体制が整備されているかどうかや運用経験などを選考基準にする考えだ。
10年6月末の外国株式への投資額は運用資産のうち約11兆円。この位置分を新興国企業への株式投資に振り向ける。(中略)
民間の企業年金では、新興国企業の株式に投資する動きが広がっている。(中略)厚労省が09年に示した公的年金の財政検証では、20年度以降の運用利回りを年4.1%に置いている。これによって、厚生年金の標準的な受給額は現役世代の収入の約50%になるという。
ただ、これまでの運用実績をみると、05~09年度の運用利回りは年平均1.63%。将来的に運用利回り年4%を確保するのは難しそうだ。
GPIFは多少リスクがあっても経済成長が高い新興国の企業にも投資対象を広げることで、運用成績を底上げする必要があると判断している。
公的年金の運用範囲を巡っては、原口一博前総務相が成長分野への積極運用を唱える一方、長妻昭前厚生労働相が安全資産での運用を主張するなど政府内で対立があった経緯がある。

(以下略、引用終わり)
私にとってはけっこう驚いたニュースです。公的年金の資産運用の一部を、新興国の株式で行うというものです。

公的年金の積立金を運用しているGPIFが、そういう方針を固めたのです。同法人が運用しているのは約117兆円という巨額の資金で、現在はその9%を外国株式に振り向けています。

これだけ多くの資金を、あまりリスクを大きくせずに、一方である程度の利回りを出すように運用するのですから、なかなか大変だろうと思います。

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○リスクを負ってでも利回りを高くしたい

そして、運用利回りが低調なために、リスクを背負っても新興国株への投資で高い利回りを目指すというわけです。

まず、外国株式への投資がポートフォリオの9%というのは、国内外への資産の分散によってリスクを減らしつつ、リターンも追求するという意味で、妥当だと思います。

それより私が問題だと思うのはおそらく日本国債が大部分を占めるであろう、国内債券(67%)ですが、ここでは触れないことにします。

そして、今回の方針見直しでは、外国株の比率は変えずに、その中の新興国株への割合をそれまでの0から増やすということになります。

これまでは先進国の企業の株にしか投資しない方針だったのですから、大きな変更です。

なぜこれまでは先進国に限定していたのかを考えますと、やはり新興国株はハイリスク・ハイリターンだからでしょう。

公的年金の積立金は加入者の老後資金の原資ですから、リスクを大きくして大きく減らしてしまうことは許されません。

そこで、安全性の高い先進国の株式に限定していたのです。

しかし、記事にあるように民間の企業年金(2階部分である厚生年金にさらに積み増す3階部分)では新興国株への投資を増やしているそうです。これは、多少リスクをとっても、高いリターンを求めるからです。


○想定利回りと実績との差

そして、厚生労働省の公的年金の財政検証でも、将来の運用利回りを年4.1%にしています。

しかし、最近の運用利回りの実績の平均は年1.63%ですから、2.5%もの差があります。

そこで、その差を埋めるべく、公的年金の運用でも新興国株へ投資することにしたのだと思います。


○新興国株への投資は妥当か

さて、それでは今回の新興国株への投資が妥当なのかどうか、考えてみます。

まず、投資先はBRICs、すなわちブラジル、ロシア、インド、中国と、南アフリカやメキシコなども加えるようです。

たしかにこれらの国は、今後も高い成長が期待されています。たとえば中国は、今後も8%前後の成長率が見込めるのではないか、という有識者もいます。

そのため、大きな成長が見込めない先進国よりも、これらの新興国の株に投資するほうが、リターンが見込めるというのは理にかなっているようにも思えます。

ただ、デメリットもあります。第一に、中国でもインフレが懸念されているように、成長は本当に続くか、いつまで続くかは予測が非常に難しいです。

中国政府もインフレが進みすぎてバブルにならないように、対策をとっているそうですが、現実にはインフレを制御するのは難しいです。

日本でも80年代後半のバブルのとき、個人投資家だけでなく企業も、銀行などからお金を借りて株や不動産などの投機に走りました。あの頃、ほとんどの人が、「株価や地価はこれからも上がり続ける」と思っていました。

しかし現実には、バブルが弾けて株価も地価も急落し、その後失われた10年がやってきたわけです。

このように、膨張した経済はいつ弾けるかわかりません。中国やブラジルなども、いつまで好調さが続くかはわからないのです。

第二に、情報収集や銘柄選定の難しさがあります。新興国では上場基準が緩すぎたり、会計制度が違うなどの問題があると思います。

また、言葉の壁もあるでしょう。

ただ、これについては、GPIFが新興国企業の財務状況などをしっかり分析できるなどの能力を持つ運用会社を公募し、そこに委託するという形になります。

そのため、しっかりした体制を持つ運用会社を選べれば、問題は無いと思います。

銘柄についても、自己資本比率が高いなどの基準を設けて、安全な企業を選べば、大丈夫でしょう。問題は、運用会社がそうした安全な銘柄を本当に選ぶかどうかですが…。


○やはりハイリスクだ

こうして考えると、やはり新興国株への投資はハイリスク・ハイリターンだといわざるを得ません。

ハイリスクという点については、高いリターンを求めるならしかたがないという意見もあるでしょう。しかし、そもそもGPIFの国内債券を中心としたポートフォリオで、年4%のリターンを求めるという事自体に無理があるのではないでしょうか。

日本は国と地方の累積債務が非常に多くなっているのです。すなわち、日本国債もそれだけ危険になっています。それなのに年金基金が多くの国債を引き受けている現状には大いに疑問を感じます。

私なら、政治的な問題を抜きにすれば、日本国債の割合は大きく減らします。そして、安全かつある程度のリターンを求めるなら、英国やドイツなど借金の少ない国の国債を購入して、外国債券の比率を大幅に増やします。

そうすれば、2~3%ほどの利回りが見込めます。日本国債より利回りが高い上に、安全性も高いのです。

つまり、ハイリスクな上に利回りも1%ほどしかもらえない日本国債を主体に運用している現状を改めない限り、新興国株に投資しても付け焼刃でしかありません。


○安全な銘柄を選んで欲しい

また、銘柄選定などを民間の運用会社に任せる点も、どうかと思います。銘柄選定については財務安全性などについてしっかり基準を設けないと、危ないと思います。

私は資産運用については、自分以外は信用しておりません。私たちの年金なのですから、安全性を確保して運用してもらわないと困るのです。

もう一つ、リターンを求める気持ちはわからなくはないのですが、だからといって新興国株に投資しなければならないのでしょうか。

アメリカのような先進国でも、リターンを見込める企業は少なからずあるでしょう。分散するという意味で新興国にも投資するのはわかりますが、リターンが欲しいから新興国、というのは疑問です。


○とにかく安全第一な運用を

引用記事に原口一博氏と長妻昭氏との間に意見の対立があったとあります。私は長妻さんの意見に賛成なのです。

無理な投資で年金の積立金を減らされたら冗談ではないからです。安全に、そしてある程度のリターンが欲しいなら前述のように安全な外国債券を増やせば良いのです。

年金基金が日本国債を買っても、日本の財政が悪くなるだけです。外国株式の比率は今のままでよいと思いますが、新興国株に投資すれば高いリターンが見込める、というのは短絡的ではないでしょうか。

私は正直なところ、GPIFにも公募される運用会社にも期待できないのです。年金の積立金は安全第一で、無理をせずに地道に運用してもらいたいです。

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