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復興財源に基礎年金国庫負担や外貨準備を転用することの問題点

復興財源に基礎年金国庫負担や外貨準備を転用することの問題点

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(日本経済新聞11/6/16の隅田川氏のコラムから引用)震災からの復興のために必要となる財源は、今年度と来年度だけでも20兆円を超えるといわれている。
この財源として考えられるのは、「既存経費の配分を見直す」「増税する」「国債を増発する」の3つである。もちろんどれも難しい。(中略)
第一次補正では約4兆円の歳出のうち2兆5千億円は「基礎年金財源の転用」によって賄われた。(中略)基礎年金財源の転用とは、年金積立金の目的外使用に他ならない。
これは国の資産を減らすのだから、国債の増発と同じである。
もう一つ「外貨準備を復興のために使う」という提案もある。確かに、日本には90兆円以上もの外貨準備があり、変動レート制の下では特に外貨準備を持つ必要はない。
(中略。しかし)この外貨準備は主に円安誘導のための為替介入の結果、蓄積されたものだが、そのための円資金は、短期国債の発行によって賄われている。
従って、外貨を処分した場合は、その分国債を償還するのが筋である。それをやらずにつかってしまったら、国の負債がその分残るから、これまた国債を増発したのと同じ事になる。
さらに、外貨準備を円に換えていくと、円高誘導のための為替介入をするのと同じことになるから、円高になりやすいことにも注意が必要だ。
以上のように基礎年金財源の転用も外貨準備の活用も実態としては国債の増発と同じだが、国債を出すより悪質だとさえいえる。
なぜなら「負担なしの財源がある」という錯覚を生み、将来世代への負債を増やしているという実感を得にくいからだ。こんな手段を使うなら、堂々と国債を増発した方がましである。
誰も負担をせずに財源が天から降ってくるような奇策はないのだ。

東日本大震災の復興のための財源をどうするかというお話です。当サイトでも書いておりますが、日本の財政は極度に悪化しています。

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そのため、国債を新たに発行して資金を調達するというのは、難しい状況です。災害復興のためとはいえ、これ以上赤字国債を増発すれば、国債利払い費が増えて予算を圧迫するなどの問題があるからです。

今では結果論になってしまいますが、財政悪化を防ぐというのも立派な危機管理といえます。借金が少なければ、復興債を発行して迅速に資金を調達することもできたのですから。

とにかく、これ以上赤字国債を復興資金調達のために発行するのは難しいです。

次に、歳出削減が考えられます。マニフェスト関連では子ども手当が見直されましたが、高校の無償化や高速道路の無料化も見なおすべきでしょう。

高校の学費を無償化する点については、高校は義務教育ではないので、無料にするのはどうかと思います。もちろん、経済的な事情で進学できない人を支援するのは必要ですが、そうした人に限って奨学金を充実すればよいのではないでしょうか。

所得にかかわらず無償化するというのは、ばらまきと言わざるを得ません。

他にも公務員給与の引き下げや国会議員の定数削減、議員歳費の削減などが考えられます。


本命は増税

ただ、日本の予算の無駄はあまりないと言われています。不要な公共工事などは止めてもらいたいと思いますが、現に民主党の事業仕分けでもたいした額は捻出できませんでした。

すると、増税が必要ということになります。経済学で「無料のランチはない」と言いますが、まさにただで昼ごはんが食べられるようなうまい話はないのですね。

ところが、菅直人内閣が行った財源調達はおかしなものになってしまいました。

まず、基礎年金財源の転用です。国庫が基礎年金に拠出するはずのお金が、震災復興に回ったのです。

しかし、それではその分、年金支払いの原資が減ってしまったのですから、年金積立金を取り崩すそうです。

これでは確かに、赤字国債を発行したのと同じ事ですね。

年金積立金を取り崩した分は、いずれ他の所で穴埋めしないといけないからです。


外貨準備

次に外貨準備です。日本では日銀が保有している外貨のことです。変動レート制の下では外貨準備を持つ必要はないという点について、詳しくないので調べて見ました。

ウィキペディアによると、固定相場制では為替要求に応じるために、無限に外貨準備を持たなければならないとあります。確かに、相場が固定されている以上、外国から多くのお金が入ってくれば、入ってきた分を日銀が吸収しないと、レートのバランスが崩れてしまいますね。

一方、変動相場制ではどうでしょうか。日本も変動レートですが、そんなに外貨準備はいらないことになります。市場のレートが変わることで、バランスが保たれるからです。

ただ、政府日銀が為替介入するときには、ある程度は外貨準備高が必要でしょう。例えば円高を是正するために円売りドル買い介入をすれば、日銀の持つドルが増えます。

円安是正のための介入なら、逆にドルを売るので外貨が減ります。

さて、引用記事にも説明されていますが、円売りドル買い介入をするなら、円を調達する必要があります。

そこで、政府短期証券(FB)を発行して金融機関から円を借り、それを売るのです。

ということは、確かに為替介入によって蓄積されたドルを処分するなら、それはFBの償還に充てられるべきです。それをせずにこの外貨を使ってしまえば、借金は残ります。

また、外貨準備を財源に充てるために売るなら、外貨を売って円を買うことになりますから、円高になるというわけです。

これを考えると、外貨準備を復興財源に充てるのはいけません。


正当な方法で財源調達を

私も、こうした方法は悪質だと思います。これらは負担のある財源なのに、負担なしと勘違いさせるものです。赤字国債発行なら、特例公債法案を成立させなければいけないので、野党や国民のチェックも働くからです。

それが予算をごちゃごちゃと組み替えるだけだと、それほどチェックは働かないでしょう。


事業仕分けの問題点

あまり政党批判をする気はないのですが、民主党の「事業仕分けによって予算のムダを省き、それを子ども手当などのマニフェストを実行する財源にする」という考えと財源調達の話は似ていますね。

まず、事業仕分けは16兆円の財源を生み出すはずでしたが、結局ははるかに及ばない額に終わりました。

さらに、仮に事業仕分けによって財源を生み出せても、それを子ども手当などのばらまき政策に使うのは本末転倒です。

一橋大の小黒一正氏がおっしゃっていますが、予算のムダを省いて出てきたお金は、借金返済(国債の償還)に充てるべきです。

なぜなら、借金を返せば、その分利払い負担も減らせるからです。

例えて言えば、借金がたくさんある家で、タンスから忘れていたお金が出てきました。それを借金返済に充てずに、遊びや買い物に使ってよいのでしょうか。

「いや、子ども手当は少子高齢化を止めるし、高速道路無料化は景気を良くする。だから無駄遣いではない」という反論もあるでしょう。しかし、財源がなく、いつまでもらえるか分からない子ども手当を支給しても、少子化を食いとめられるとは思いません。

逆に、手当をもらった人は将来への負担から、貯金している人も多いそうです。

また、高速道路無料化も、大きな経済効果を生めればそれは無駄ではないでしょう。しかし、無料化したら道路の維持管理や新しい道路を作る財源はどうするのでしょうか。

結局は他のところで税金がとられるのであれば、景気を大きく浮揚させるとは思えません。

また、自動車を使わない人や一般道しか使わない人の払った税金を高速道路を無料にするために使うのは、応益者負担の原則に反します。

加えて、無料化によって渋滞が増えれば、高速道路を使う意味はなくなります。


増税論議

政府与党には、事業仕分けの轍を踏まないように、正々堂々とした財源調達をお願いします。

幸い、野田佳彦新総理は財政問題にも関心を持っておられるので、復興財源のために所得税などを引き上げる考えをされています。

増税をして歳入を増やすのは、心情的にはいやですが正攻法です。これ以上日本の財政が悪化してはいけないので、やむを得ないと思います。

ただ、国会議員や官僚も身を切ってもらわないといけませんし、歳出削減の努力はずっと必要です。

また、今後国の財政を立てなおしていくためには、消費税率上げは不可欠だと思います。

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