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日本国債格下げと財政再建の必要性

日本国債格下げと財政再建の必要性

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(日本経済新聞11/8/25から引用)米格付け会社が日本国債の格下げを発表したが、24日の債券市場はほとんど反応しなかった。金融機関の間で国債による資金運用ニーズが強いためだ。
だが、国債格下げをきっかけに金融市場が日本の財政リスクを改めて意識する可能性がある。政治の混乱から財政再建が進まないとの見方が定着すれば、長期金利が上昇して財政悪化に拍車がかかりかねない。
(中略)(債券市場の長期金利がほとんど変わらなかった)背景には、巨額の国債を自国の豊富な資金で吸収する日本独特の構図がある。
企業や家計が海外で稼いだお金(経常黒字)が、銀行を通じて国債市場に流入しており、国債消化を海外マネーに頼る南欧諸国などと大きく異なる。
政府は低コストで借金を続けられ、急に債務不履行に追い込まれるリスクは小さい。
もっとも、こうした環境はいつまでも続かない。小峰隆夫法政大教授は「経常赤字への転落が危険信号の一つ」と指摘する。
大震災や原子力発電所の自己で火力発電用の液化天然ガス(LNG)の輸入が増え、貿易赤字が膨らむ可能性がある。日本経済研究センターの予測では最悪の場合、日本は17年度にも経常赤字に転落する。
消費税など増税の余地が大きい点も国債市場が平静を保つ理由の一つ。だが景気の足腰は弱く、政治家の増税アレルギーも強い。
日本経済研究センターの岩田一政理事長は「政府への信任がなくなれば、市場が荒れることも否定できない」と警鐘を鳴らす。
長期金利の上昇は、多額の国債を保有する金融機関に打撃を与える。直近の国内銀行の国債保有残高は150兆円規模。
長期金利が1%上昇すると、メガバンク3行で2兆円規模の含み損が出るとの試算もある。
シティグループ証券チーフJGBストラテジストの道家映二氏:経常収支が赤字に転落し、円安が進んだ場合には金利上昇が加速する。
(中略。債券格付けのQ&A)ムーディーズは日本国債の格付けを「Aa3」(ダブルAマイナスに相当)に引き下げたが、さらに1段階下がるとシングルA格になる。
海外の年金基金や政府系ファンド(SWF)の中には、シングルAはリスクが高く投資に適さないとみているところもある。
(中略)格付けに問題はないのか:格付け会社に対する信用は揺らいでいる。米国の信用力の低い個人向け住宅ローンであるサブプライムローン関連の債券や企業等に格付け会社が不合理に高い格付けを与え続け、これがリーマン・ショックを招いたとの批判があるためだ。
今回の格下げで、日本は財政危機に直面するスペインやイタリアよりも信用力が低いということになる。
スペインやイタリアの長期金利が5%前後なのに対して、日本は1%台。「金利差がこれだけあるのに信用力が劣るわけがない」(東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト)と格付けを疑問視する声も少なくない。
実際にS&Pは今月5月に米国債を初めて格下げしたが、それ以降も米国債は買われ続けている。

このところ、格付け各社による日本国債格下げが相次いでいます。原因は、財務体質が極度に悪化しているからです。

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ちなみにムーディーズの場合、日本国債は上から6番目(A2)にまで下げられたこともあります。それに比べれば今は上から4番目なのでまだましなのですが、今後はもっと下げられる可能性もあります。

最近もスペインだったかイタリアだったかはっきりは覚えていませんが、国債の格付けが一気に3段階下げられました。


下げられた理由

まず、格付けが下げられた理由ですが、一つには日本経済が上向かないことがあります。景気がよくなれば、税収が増えて財政も楽になるからです。

東日本大震災もダメージとなりました。それでは日本経済をよくするにはどうしたらよいのでしょうか。これについては百家争鳴で、いろいろな意見があります。

日本経済の問題の一つに、デフレ(物価安が続くこと)から脱却できないというものがあります。デフレから脱却するには、私は税と社会保障を抜本的に改革し、国民の安心を増すことこそが処方箋だと思っています。

といっても一橋大の小黒一正氏の受け売りですが。

具体的には、消費税率を上げ、公的年金や医療制度が持続可能なものにし、加えて世代会計を導入して世代間格差を是正します。


デフレから脱却する方法

なぜこれでデフレから抜け出せるかといいますと、国民は今、将来への不安を抱えています。国の財政は極度に悪化し、公的年金も特に若い世代は、自分たちが受給できるのか疑問を感じています。

医療や介護でも、制度が破綻しかかっています。

加えて政治がだらしなく、確固たる国家戦略に乏しいまま、政策実現への道のりを考えずに思いつきで政権運営していると感じます。おまけに政治家の多くは、増税のような有権者に受けの悪い政策ははなから拒絶しています。

そうなると、国民の多くは国を信頼せず、自分の生活は自分で守ることになります。すると、お金を預貯金に回して、消費や投資は極力抑えることになります。これは当然です。

その結果、消費や企業への投資が増えず、経済が縮小してデフレが続いてしまうというわけです。

そこで、まずは増税で税収を増やし、国家予算の赤字をなるべく減らし、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を黒字化します。これで少なくとも国の借金が無制限に増えていくことは回避できます。

次に、公的年金や健康保険などの社会保障を整備して、国民が安心して暮らせる制度にします。税収増による財源ができたので可能です。

一方で、増税する分をなるべく少なくするために、国会議員の定数削減や歳費の削減など歳出削減は継続して行います。

そして、少子高齢化が進むことに対応するために、世代会計を導入して、世代間格差を是正します。そうすれば、若い世代も将来年金や医療などが安心して受けられることがわかるので、結婚して子どもを生む人も増えるでしょう。

これこそが少子高齢化の本当の対策であって、財源がないのにお金を出す子ども手当は対策にならないと思います。

このようにすれば、財政問題は解決に向かい(つまり借金を減らしていける)、国民の安心が増してこれまで貯蓄に回していた分が消費や企業への投資に回ります。

そうすればデフレが解消されるというわけです。


金利が変わらなかったわけ

さて、国債の格付けが下げられても、日本の長期金利は殆ど変わりませんでした。

理論上は、格付けが下がれば、市場でリスクが高いとみなされます。するとリスクの分、高い利回りを投資家が求めます。その結果、金利が上昇します。

ちなみに長期金利は10年物国債の金利が指標となります。国債の金利は入札によって決まりますから、多くの投資家が国債に高い金利を求めれば、金利は上がるのです。

つまり、普通なら国債の格付けが下がれば金利が上昇するのですが、今回は上がらなかったのです。

その理由としては、一つには市場が格下げを織り込み済みだったことがあります。

また、日本は国債の94%を国内で消化できている、すなわちほとんどを国内の投資家が買っていることもあります。つまり、今のところは格付けがどうであろうと、低い金利で買ってくれる人が国内にいっぱいいるんだから問題ないというわけです。

確かに今はそうです。しかし、これからはおそらく、こんなにうまくは行かなくなるでしょう。


経常黒字が続くとは限らない

今後は、今までのように国債を国内で消化できなくなると考えられます。

その理由は第一に、経常黒字が縮小するか、経常赤字に転落しかねないからです。今の日本は、貿易黒字なので外国からお金を稼いでいます。

そのお金で銀行などが国債を買うことができたのです。しかし、引用記事にあるように今後は経常黒字を保てないかもしれないのです。

最近はFTA(自由貿易協定)やTPP(環太平洋経済連携協定)が大きな話題になっています。これはつまり、国同士で関税を減らしたり撤廃して、自由に貿易をしましょうということです。

つい昨日も、アメリカと韓国がFTAを締結して、95%の品目で関税が撤廃されることになりました。

FTAについては、ただでさえ農家の高齢化が進み、有休耕作地が増えている日本の農業に大打撃を与えるという声もあります。

ただ、それでは韓国がアメリカとどんどん輸出入をする一方で、日本はそうではないとなれば、日本は世界経済から取り残されてしまうのではないでしょうか。

日本もFTAを結んで、農作物の高品質を生かして、攻めの農業をするべきだと思います。もちろん農家への必要な援助もすべきだと思います。

ちょっと話題がずれてしまいましたが、このまま日本がFTAやTPPに及び腰では、貿易黒字もそのうちに失われかねません。すると、海外で稼いだお金で国債を買ってもらうというシナリオは崩れます。


少子高齢化

第二に、少子高齢化があります。日本は先進国中で最も少子高齢化が進んでいます。ということは、お金を稼いで納税してくれる現役世代が減って、年金給付や医療、介護にお金の必要な高齢者が増えるということです。

つまり、税収が減る一方で、社会保障費が増えるのです。

また、高齢になった国民は預貯金を取り崩して生活費などに充てます。すると、家計の金融資産が減るのです。引用記事に家計の金融資産と国債・地方債のグラフがついていますが、家計の金融資産は減り始めています。

一方で国債・地方債はどんどん増えて、家計の金融資産残高に迫っています。その差はグラフで見る限り、300兆円くらいしかありません。

これは、実に恐ろしいことなのです。銀行などの金融機関は、預金者の預けたお金を元手にして、国債を買っている(引き受けている)のです。

ということは、高齢化によって預貯金が減れば、銀行もこれまでのようにたくさんの国債を買うことができなくなります。

そうなれば、もう国債の国内消化ができなくなるのは時間の問題というわけです。


金利の急騰

ここまでの話をまとめますと、日本の経常黒字がなくなったり、少子高齢化がますます進めば、銀行などの大口投資家が国債を大量に買うことができなくなるということです。

するとどうなるでしょうか。新規に国債を発行しても、「しょうがないから買ってもいいけど、金利が高くないとやだ」という投資家が増えるのです。

リスクを考えれば、今の1%台という金利ではとても無理でしょう。先進国の長期金利が3から5%ほどのところが多いことを考えると、それを上回る金利になってしまう可能性が高いです。つまり金利の急騰です。

すると、困ったことが起きます。発行済の国債の価値が暴落するのです。なぜなら、既発国債は金利が低いので、新発国債の金利の高さと比べるとまるで魅力がなくなるからです。

例えば5%金利が上がると、メガバンク3行で10兆円ほどの含み損が出るかもしれないのです。大銀行とはいえ、これほどの損失が出てしまっては、大打撃でしょう。

また、銀行は自己資本比率をある程度保つことが義務付けられていますが、資産査定によって既発国債の含み損が計上されれば、自己資本比率が基準を下回る可能性も否定できません。

こんなことになってしまえば、まさに金融危機です。取り付け騒ぎが起こり、企業や個人事業主への融資は滞り、経済にも打撃となります。

嫌な話が続いてしまいましたが、それほど日本の財政悪化はまさに大問題だということです。

金利の急上昇は財務省もとても心配しているそうですが、決して絵空事ではありません。引用記事ではムーディーズの日本国債の分析をしているトーマス・バーン氏のインタビューも掲載されています。

バーン氏は、長期的には金利の急騰リスクがあると指摘しています。日本国内で低金利で、国債を消化できているうちに財政再建に取り組まないと、金利が急上昇してしまっては手遅れになりかねないのです。

ちなみに三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行も格付けが1段階下げられています。


消費税率上げが検討されている

ここで少し救いのある話をしましょう。野田佳彦総理大臣は、財政再建に取り組むことを表明しています。具体的には2010年代中頃に消費税率を10%に引き上げます。

消費税率が5%上がれば1年に12.5兆円ほどの税収増になりますから、まだまだ不十分とはいえ、財政悪化に少しは歯止めを掛けられるでしょう。

消費税上げは景気を冷え込ませて税収を減らすから逆効果だという意見もあります。しかし、仮に増税をしなかったら、国債の利払い費だけでも年に10兆円ほどかかっているのですから、どんどん財政は悪化するのです。

また、1年に40兆円以上の財政赤字を景気回復による税収増でまかなうことはできません。

加えて、増税をしなかったらもはや火の車になっている公的年金や医療保険制度を安心できるものに変えることはできません。財源がないからです。

そうであれば、国民も将来の暮らしに不安を抱えたままですから、財布のひもを一層固く締めることになります。つまり、消費が増えず、失業が増え、給料も上がらず、デフレスパイラルになりかねないのです。

もちろん私も増税はいやです。しかし、歳出削減も進めた上で、国民の年金や医療、介護、福祉といった自分たちの生活のために税金が使われるのなら、自分たちのためになるはずです。

今回の国債格下げは、財政悪化を放置している日本への警告だと素直に受け止めるべきでしょう。そして、手遅れになる前に財政再建に取り組めば、国民も安心して暮らせる明るい社会を作れるはずです。


経常赤字と円安

次に、道家氏の見方についてです。ちなみに「ストラテジスト」という肩書きは、戦略立案者という意味でしょう。

経常収支が赤字になり、円安が進んだ場合には金利上昇が加速するとあります。

経常赤字があるということは、外国にお金を払わないといけないということです。そして、円安外貨高になれば、そのお金が実質増えてしまうということです。

ということは、外国に支払うお金を調達しなければいけません。そのために金利が上がるということだと思います。

次にムーディーズの格下げについて。海外の年金基金などの中には、シングルAはリスクが高く投資に不向きと見るところもあるとあります。

ムーディーズで言えば、あと2段階下がるとそれに該当してしまいます。そうなれば、日本国債を国内消化できなくなったので外国投資家に頼ろうとしても、引き受けてくれる人がどれだけいるかは疑問です。

ギリシャの財政問題でも日本の不良債権処理でも同じですが、問題を見なかったことにして先送りすれば、ますます問題を大きくするだけです。そうなる前に解決すべきです。


格付けの問題

次に、格付けは当てになるのかという話です。確かに、リーマン・ショックのときに格付け各社がサブプライムローンを組み込んだ債券などに不当に高い格付けを与えていました。

このように、格付けが必ずしも正しいとは限りません。もともと格付けは民間企業独自の見解ですから。

ただし、格付けが金融商品の安全性を測る一定の目安になることもまた確かです。大事なのは、格付けをうのみにするのではなく、自分でも判断することだと思います。

最後に、日本は金利が低くて済んでいるのに、金利が高いスペインやイタリア国債より格付けが低いという点について。

前述のように、金利が国債の信用度を示していると言えます。リスクの高い債券なら、金利も高くなるからです。

ただ、日本国債については、今後の懸念も含めて格下げをしたのでしょう。前述のように、いったん市場が「日本国債は危険だ」とみなせば、一気に金利が上がる可能性があるからです。

また、日本国債は発行額が巨額なので、世界経済に与えるダメージもギリシャやイタリアとは比べ物になりません。

例えばギリシャの国債発行額は34兆円ほどです。それに比べて、日本の公債残高は600兆円以上です。両者の定義が違うかもしれませんが、単純に言って約20倍の規模があります。

こんなに巨額の日本国債がもしデフォルトにでもなってしまえば、世界経済に与える影響は計り知れません。

それを懸念して、日本国債の格付けも厳しめになっているかもしれません。

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