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スウェーデンやカナダに学ぶ歳出削減の方法

スウェーデンやカナダに学ぶ歳出削減の方法

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(日本経済新聞11/11/18、政策研究大学院大学客員教授の田中秀明氏の文章から引用)ギリシャの債務危機を契機に財政再建の必要性が高まっている。
世界にはスウェーデンなど、赤字は小さく純債務がマイナス(貯蓄)の国も存在する。
(中略)90年代前半のバブル崩壊後に財政危機に直面したスウェーデンは予算制度を抜本的に改革した。税収見積もりに基づき3年間の歳出総額(国債費除く)に上限を設定し、議会の承認を受ける。
これは、日本のように当初予算にのみ設定される上限ではなく、決算でも守られなければならない。(中略)
3年分の上限設定後、医療など27分野への内訳を決める予算閣議は、閣僚が首相の別荘に2日間閉じこもって開かれる。
(中略。スウェーデンの)財政規律をさらに高める制度が財政に関する独立委員会の設置だ。(中略)
同国の経済政策分析局は中央銀行のように政治的に強い独立性が与えられており、予算に使う成長率の前提を提供するとともに、中長期推計や政府への勧告も行う。
(中略)成長率の楽観的な予測を防ぎ、政府にルール違反の警鐘を鳴らす役割を担う。
(中略)90年代に事業仕分けで財政再建に成功したカナダは、最初に首相や財務相が省庁に、1~4割の歳出削減目標(一律削減ではない)を示し、各大臣は査定大臣となって自ら歳出を削減した。
予算制約が事業の優先順位を決める。成功の要因は、内閣が予算の大枠を定めるトップダウンと、その枠の中で資源を再配分する裁量を省庁に与えるボトムアップを均衡させることだ。
(中略)総額が減っても調達などで効率化すれば、不足する分野に予算を活用できる。これは予算の分捕り合戦をやめさせ、省庁に予算枠の中で効率化させるインセンティブを与える。
予算の使い方に裁量がある一方、その使途と成果については国会で厳しく精査される。
(中略。日本は)早晩、国内貯蓄では財政赤字を賄えなくなると指摘されている。(中略)財政規律の軽視は国民生活を脅かす。
日本の財政赤字が大きいのは、政治的なコミットメントを確保する仕組みに乏しく、意思決定が断片化し、透明性も低いからである。
(中略)予算制度に内在する問題を解決せずに財政再建はできない。現世代は選挙権を持たない子供たちに責任を負っており、ツケの先送りを一刻も早くやめなければならない。

ギリシャに端を発したユーロ圏の債務危機は、いまだに世界経済に大きな影響を及ぼしています。イタリアやスペインでも財政危機が懸念されており、国債の利回りが7%台にまで上昇しています。

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これを見ていると、治安が悪くなり、観光客が減り、公務員がデモを行っているギリシャの光景は、対岸の火事には思えません。

ギリシャの国債残高は34兆円ほどだそうですが、日本の国の借金は1000兆円近くになっています。国債にも種類がありますので簡単に比較はできないかもしれませんが、日本の借金の規模はギリシャの30倍近くということになります。

ところで、スペインでは国政選挙がありました。与党は緊縮財政によって財政建て直しを訴えましたが、国民は重い負担を嫌い、与党は負けてしまいました。

もちろんスペイン国民の気持ちはわかります。増税だったり、社会保障などの行政サービスが低下したりするのは嫌なものです。ですが、財政再建をしなければもっと悪い事態になってしまうと思います。

このスペインの例を見ても、日本の財政再建は本当にいばらの道だと思います。しかし、早めに手を打たなければ、2021年にも国債が国内消化できなくなるという意見もあるのです。

ちなみにスペインもイタリアも、債務残高のGDP比は日本の210%に比べるとずっと少ないのです。つまり、日本の台所事情は世界最悪の火の車ということです。


税収増と歳出削減

さて、財政再建をするにはどうすればよいでしょうか。これは家計のやりくりと同じです。歳出を減らし、歳入を増やすのです。

歳入を増やすには、増税しかありません。もちろん国民にとっては負担が増えますし、私達の血税がくだらない、無駄な事業に使われていることもあります。

「冗談じゃない」という気持ちは私にもあります。しかし、日本は低福祉、超低負担という国なので、福祉に見合うだけの税負担がないのです。

つまり、行政サービスを維持するなら、増税はやむを得ないということになります。

増税は景気を冷え込ませるという懸念もありますが、増税によって増える税収の多くを年金や医療などの社会保障に使えば、国民に返ってきます。

それにより国民が安心して暮らせるようになり、貯蓄に回していた分が消費や企業等への投資に回るようになります。そうなれば、逆に景気がよくなる可能性もあります。

なにしろ、外国では日本より借金の少ない国が財政破綻を懸念され、日本では社会保障費が毎年1兆円も増えています。公的年金も100年安心を謳いながら、近い将来に破綻する可能性も言われています。

これでは国民も「国など信頼できない。自分の身は自分で守る」と考えて、無駄な消費など止めて貯蓄に励むはずです。これをどうにかしないと、景気を良くすることなどできないでしょう。


歳出を減らすには

というわけで、増税はやむをえないと思っています。野田佳彦総理大臣も消費税率上げという困難な政治課題に取り組むと明言されています。

もし消費税率を上げることが実現できれば、当面は少なくとも財政破綻の時期を遅らせることができます。

次に、歳出削減もしなくてはいけません。例えば借金がたくさんある家庭で、収入が増えたからといって無駄遣いを減らさないでいては、借金を減らしていくのが難しいからです。

逆に、歳入が増えたから無駄な事業を行なおうなどという人がでてこないとも限りません。それに、歳出削減をしなければ、そもそも消費税上げに国民の理解は得られないでしょう。

ただ、予算のムダを減らすというのはどこの国でも難しいことのようです。引用記事にも、アメリカが財政黒字を達成していたのに、減税や歳出増を求める政治家を抑えられず、借金が増えてしまったとあります。

それは私でも、税金が安くなったり年金がたくさんもらえたり医療費が安くなればうれしいです。しかし、「無料のランチはない」のです。財源がなければ、けっきょく大盤振る舞いは国民の首を締めます。


スウェーデンの例

スウェーデンやニュージーランドは国の借金がないどころか、貯蓄がある状態だそうです。これには驚きましたが、考えてみればこれが普通なんですよね。

経済観念のしっかりしている人なら、借金はしないで貯蓄を増やすでしょう。貯金をしないでお金をばらまいていたら、「あいつは信用できない」と言われるでしょう。

つまり、日本のことです。

さて、スウェーデンも財政危機に直面して、そこから頑張って再建に取り組んだようです。日本も見習うべきだと思います。

スウェーデンはまず、3年間の歳出総額に上限を設定して、議会の承認を受けます。日本は1年単位ですね。

そして、決算でもこの上限を守らないといけません。このあたりは日本でもすぐに真似できそうですし、すべきだと思います。

次に、歳出の上限が決まっていますから、そのなかでお金の使い道の優先順位をつけないといけません。これを決めるのが全閣僚です。

このあたりが日本とは違いますね。日本の大臣はリーダーシップを発揮するどころか、官僚の言いなりになっているように見えます…。

こうしたところでリーダーシップを発揮できるのが、本当の政治主導だと思うのですが。

また、半年ごとに目標と実績がどれだけ合っているかを半年ごとにチェックすべきだと書かれています。これも日本でもすぐにできるはずです。

日本は仲間内でなあなあで済ませるのが好きなようですが、そうして互いのチェックを怠っていたから、ひどい財政状況になってしまったのではないでしょうか。

財政をチェックする独立委員会も必要です。民間の委員も入れればよいです。政治家や官僚に任せていると、どうしても自分たちの都合の良い意見がまかり通るおそれがあるからです。


カナダ

カナダの例でも、閣僚自らが省庁の歳出削減に取り組みました。トップが取り組まないとこういうことはできません。

カナダでは、ある省庁の予算はこれだけだと決めた上で、その中で何にどう使うかを官僚に任せたようです。こうなれば、官僚も限られた予算内で何を優先するかを考えます。

スウェーデンでもカナダでも、これだけ思い切った歳出削減をするには、政治家の強いリーダーシップが必要ですね。日本でも歳出を減らすために、思い切った施策をしてほしいものです。

最近では、日本でも民主党の行う事業仕分けだけでなく、野党も参加する仕分けが行われました。これはよい事だと思います。

こうしてみますと、他国の成功例はすぐにでも日本でも実行可能だと思います。政府与党も野党も、歳出削減に向けてどのような政策を提唱するのか注視したいと思います。


今取り組まないと手遅れに

日本では、まだ国内で赤字国債を消化できています。銀行などが資金を運用するために国債を低金利で買ってくれているからです。

しかし、今後貿易収支が赤字になれば、外国からお金が入ってこなくなり、逆に外国にお金を払わないといけなくなります。

そうなれば、国債を買う原資もなくなります。また、少子高齢化が進んでおり、税収が減る一方で医療や年金などの支出が増えます。

団塊世代が一斉に退職すれば、それに拍車がかかりますし、高齢世代は貯蓄を引き出して生活費などに充てますから、銀行などの預貯金も減ります。

こういうわけで、国債を安定して国内消化できるのも長くはありません。また、ヨーロッパでさえあの調子ですから、巨額の借金を抱える日本の国債を海外投資家がたくさん買ってくれるかどうかは大いに疑問です。


金利が上がると

こうして国債の引き受け手が減れば、国債の金利が上昇します。すると、第一に銀行などの国債保有者が打撃を受けます。保有している国債の価格が下落するからです。

そうなると、銀行などに含み損が出て、自己資本が減ってしまいます。すると経営危機を嫌気して銀行などの株主が株を売ってしまいます。すると株価が下がってしまいます。

そうなると困るので、銀行はいやいや保有国債を安い価格で売り払うしかありません(ヨーロッパの銀行がこの状態になっています)。そうなれば損失が出ます。

また、国債の売りが増えてしまうので、ますます既発国債の価格が下がってしまいます。ヘッジファンドなどがこの機に乗じて国債先物を売り浴びせるかもしれません。そうするとさらに金利が上がり、既発国債の価格が下がります。

こうして、金利が上がると銀行などの金融機関の財務を弱めてしまいます。すると、下手をすると自己資本規制に引っかかってしまい、破綻してしまう金融機関も出る危険性があります。

そうでなくても、銀行に巨額の損失が出れば、預金者が一斉に預金を引き出すかもしれません。そうすると、銀行は保有するお金が減るので、企業などへの融資がしにくくなります。

その結果、金融システムが正常に働かなくなり、資金がショートした企業の倒産が相次ぐ恐れがあります。

それは銀行の不良債権を増やすことになり、ますます銀行を苦しめます。銀行の株価はさらに下がってしまいます(すると自己資本比率も下がる)。これは株主にもダメージとなります。

ちなみにBIS規制(銀行が国際業務を行うための自己資本規制)に抵触すれば、銀行は国際業務を行えなくなります。そうなればさらに銀行の収益を押し下げるでしょう。

あるいは、自己資本比率を高めるために銀行が貸し渋りや貸し剥がしをするかもしれません。それは日本経済に大打撃となります。

また、銀行からの預金引き揚げが相次げば、銀行が国債を買う原資はますます減りますから、ますます新発国債の利回りが上昇します。

つまり、金利が急騰します。ギリシャやイタリアなどと同じです。そうなると、ますます銀行は経営が苦しくなります。国は国債利払い費が急増するので、ますます予算が圧迫されて国家運営に支障が出ます。

というわけで、金利の急上昇は本当に恐ろしいのです。

ただ、今はまだ日本国債は安全だとして幸いにも買われており、金利も1%前後です。金利が落ち着いている今のうちに、財政再建を進めないといけません。

金利が上がり始めてからでは遅いのです。


日本再建の最後のチャンス

引用記事には次世代のことが書かれています。最近生まれた子供たちやこれから生まれてくる子どもには選挙権がありません。それなのに、生まれながらにして国と地方の巨額の借金を負わされているのです。

世代会計の専門家はこれを経済的虐待だと訴えています。これから生まれてくる子どもは1億円ほどの借金を背負っている計算だとも聞いています。

これは本当にいけないことですし、こんな状況はさらに少子化に拍車をかけるでしょう。

大人が子どもの未来を奪ってはいけません。

というわけで、増税による税収増、予算の透明化と支出ルールを設けることにより歳出削減を継続して行なっていくことが不可欠です。

そうして財政再建に取り組み、一方で疲弊した社会保障制度を整備して持続可能なものにする。

こうした努力をすれば、日本もスウェーデンのように生まれ変われるはずです。

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