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財政中長期試算で経済成長だけでは財政再建が不可能なことが明らかに

財政中長期試算で経済成長だけでは財政再建が不可能なことが明らかに

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(読売新聞11/1/22から引用)
(中略)政府が、経済財政に関する中長期的な試算を発表した。
財政の健全度を示す国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)は、年1%台半ばの名目成長を前提とした場合、2020年度に23.2兆円の赤字になるという。
政府は、20年度のPB黒字化を目指している。だが、このまま手をこまねいていれば、達成は不可能であることがはっきりした。
(中略)10年度のPB赤字は30.9兆円である。それが20年度に向け、多少改善するが、少子高齢化で社会保障費が増え、金利上昇で国債の利払い費も増えることで、結局、黒字にはならないとしている。
消費税は1%の税率で2.5兆円の税収がある。20年度の赤字23.2兆円を消費税率引き上げだけで補うとすれば、9%以上の引き上げが必要になる計算だ。
(中略)今回の試算を見れば、税率を10%に引き上げたとしても、財政再建には不十分ということだ。税率15%程度にしてはじめてメドがつくという、極めて厳しい現実を突きつけられている。
一方で、高めの経済成長が続けば税収が増え、財政再建は可能ではないかとの議論もあろう。
その点、今回の試算には3%超の名目成長を前提とした数値もある。このところ、0%をはさんだ名目成長が続いていることを考えれば相当な好条件だ。
しかし、それでもPBの赤字額は、20年度に16.2兆円残る。やはり消費税率引き上げが必要だというのが、試算の示すところだ。
PBの黒字化は国際公約となっている。実現できなければ、国債の信用が失われかねない。そうした事態を防ぐためにも、税制の抜本改革が急がれよう。

政府の財政に関する試算についての記事です。まず、プライマリー・バランスについて。基礎的財政収支とも言われ、国債を除いた歳入と歳出とのバランスを表したものです。

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プライマリーバランスを黒字にする意義

プライマリーバランスが黒字ということは、国に借金がなければ国の蓄えが増えることになります。借金があれば、借金を減らしていけます。

日本の場合、国と地方の長期累積債務が860兆円ほどと言われていますから、この膨大な、想像もつかないほどの借金を減らすには、プライマリーバランスを黒字にしないといけないのです。

プライマリーバランスがゼロになれば、少なくとも新たな借金を増やさずに済みます。ただし、国債費(国債の償還と利払い費など)は毎年負担しなければいけません。

国債費は現在毎年20兆円を超えていますので、たとえプライマリーバランスを0にできたとしても、そのままでは借金を減らすことはできません。

なぜなら、プライマリーバランスが均衡しても、国債費をまかなうために赤字国債を発行しないといけないからです。

ということで、国の膨大な借金を減らすためには、税収を大幅に増やすか、歳出を大幅に削減して基礎的財政収支をかなり大きな黒字にしないといけないのです。

こうして考えてみますと、日本の財政を立て直すのは非常に難しいということがよくわかります。「経済成長を実現すれば消費税上げは不要」という説もありますが、実際にはまず不可能です。


経済成長だけでは財政再建は無理

さて、試算では年1%台半ばの経済成長を続けたと仮定しても、2020年度のプライマリーバランスは23.2兆円の赤字になってしまうという、厳しいデータを示しました。

今の経済成長がだいたい0%ですから、1%台の経済成長を実現するだけでも難しいです。そしてもし成長できたとしても、とうていそれだけではプライマリーバランスを黒字化できないというのです。

ところで、2020年あたりには日本の財政は破綻するという説は少なくありません。このままのペースで借金が増えていけば利払い負担が雪だるま式に増えていく一方で、少子高齢化によって国債の引き受け手が減るからです。

もっと具体的に言えば、働く世代が減って高齢者が増えるので、税収は減りますし、国民の預貯金が減るので銀行などの金融機関がそれを元手に国債を買うわけに行かなくなるからです。

そうするとどうなるでしょうか。財政がさらに逼迫するうえに、国債の利回りが急上昇するおそれがあります。その結果、銀行や保険会社などの保有する既発国債の価値が暴落して、金融機関の破綻が相次ぐおそれがあります。

また、経済への悪影響も甚大でしょう。さらに、借金を借金で返済していた国が、赤字国債によってお金を調達できなくなります。国債の債務不履行(デフォルト)という悪夢が起きるかもしれません。

デフォルトは起こらない、お金をじゃんじゃん刷ればお金はいくらでも作れる、という意見もあります。たとえ政府がそうしても、お金の価値が暴落してハイパーインフレになることは間違いありません。

そうなれば、結局国債を償還してもらっても、実際の価値が暴落することは同じです。ほとんどデフォルトと変わりません。


子ども手当に効果はあるか

民主党のマニフェストに、子ども手当があります。これは大震災が起きたことで廃止されるようですが、子ども手当の目的は少子高齢化を防ぐことにありました。

少子高齢化がさらなる財政危機につながることを考えれば、名案にも思えます。しかし、財源を(結局少ししかなかった)埋蔵金に頼っていては、子ども手当がさらに財政を悪化させてしまいます。

そして、保育園などの整備やお母さんが103万円や130万円の壁(配偶者が一定を超えるの収入を得ると、かえって収入減になること)を気にせずに働けるようにするなどの施策をしないことも問題だと思います。

これでは子ども手当を配っても、貯蓄に回るだけでしょう。

また、年金や医療などの制度疲労が叫ばれているのにこれを放置していては、国民の将来に対する不安は消えませんから、いくら手当を貰っても、余裕のある人でないと子どもを産んで育てることはできないでしょう。

そのため、子ども手当が本当に少子化対策につながるのかは大いに疑問です。

というわけでここまでの話をまとめますと、経済成長だけでは財政健全化は非常に難しい、プライマリーバランスを大きな黒字にしないと、借金は減らせないどころか増えていくということでした。


3%の成長でも

なお、経済成長については3パーセントの名目成長(物価変動を考慮しない数値)の場合の試算もついています。この場合でも、20年度のプライマリーバランスは16.2兆円の赤字です。

PBはある程度の黒字でないと借金を減らせない、少しの黒字でやっと借金増加を食い止められます。これを考えると、やはり経済成長だけで財政問題を解決するのは無理でしょう。

そこで消費税を上げることになります。大きな税収を確保できるのは消費税しかないからです。一方で消費税には低所得者に負担が大きいという逆進性の問題がありますので、それへの対応は必要です。

消費税率を1%上げると、2.4~2.5兆円の税収増になると言われています。ということは、20年度のプライマリーバランスを(経済成長1%台半ばを実現したとしても)均衡させるだけでも、消費税率を15%ほどにしないといけないことになります。

実際にはそれだけ経済成長を続けるのは難しいでしょうから、もっと上げないといけないと思います。

こうして考えますと、いかに日本が借金を野放図に増やし続けてきたかということがわかります。


財政建て直しと社会保障整備が成長を促す

最後に、消費税率の引き上げは経済成長を妨げるのではないかという説について。これについては当サイトでもご紹介していますが、決してそうではないと考えます。

第一に、疲弊した社会保障を整備して国民が安心して暮らせるようにするための財源に消費税を(全部ではないにせよ)充てるようにするからです。すると、国民は必要以上の貯蓄をしなくてよいので、消費を増やします。

それは経済成長につながります。

第二に、国の累積債務が増えると、企業への投資などに回るお金が減ってしまい、経済成長を阻害するのです(小黒一正氏)。

ということは、税制と社会保障を抜本的に改革することは、国民の安心を増し、消費を増やし、企業への投資を増やし、経済成長につながるというわけです。

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