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なぜ国の借金は増えたか、その歴史

なぜ国の借金は増えたか、その歴史

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○NHKスペシャルの概要

2010年11月7日に、NHKスペシャルで「862兆円 借金はこうして膨らんだ」という番組が放送されました。

私も国の巨額の累積債務にはとても関心を持っていますので、興味深く見ました。その概要や感想などを書いてみます。(敬称略)


○番組の概要

毎秒130万円も増えている国・地方の借金。国債の累積額がどんどん増えている。

2010年度末の国・地方の長期債務の推計は862兆円。借金の額は、国民一人当たり700万円ほどになってしまっている。

借金をいつまで続けられるのか、危ぶまれている。番組は、どうしてこれほどまでに借金が膨れ上がってしまったのかを、旧大蔵省の幹部が口述した資料を基に検証した。

この資料は、公表を前提にしておらず、当時の幹部の生々しい本音が書かれている。

昭和40~50年代初めに、初の借金がされた。当時の事務次官、谷村裕は、東京オリンピック後の不況の対策をするために赤字国債を発行したことを、麻薬に例えた。

その後、田中角栄首相が社会保障の大幅拡大を掲げた(福祉元年)。その結果、毎年10パーセントずつ歳出が増えていくと試算された。

元財務大臣の藤井裕久は、経済成長が続くというムードが強かったために、財源を楽観視していたと振り返る。

しかし、オイルショックの到来で成長は終わった。そのため、国は予算を抑えて公共事業を伸ばさないようにした。しかし社会保障費は毎年1兆円ずつ増えていった。

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膨張する社会保障費

社会保障費はいったんつくると減らせない。そこで昭和50年には2兆円規模の赤字国債を発行した。

このままでは借金を重ねることが慢性病になってしまう。大蔵省の幹部にはそうした危機感があった。

そこで、税収を増やして借金を解消するために、思い切った景気対策が福田赳夫首相と長岡實事務次官の元で行われた。

その背景には、経済成長を4から7パーセントへ増やして、世界経済を牽引してくれという外国からの要求もあった。

こうして昭和53年に景気対策がとられたが、成長は思ったほどできなかった。そのため税収は伸びず、借金だけが残った。

日本経済は成熟し、以前のような高成長が望めなくなったのだ。そこで大蔵省きっての天才と呼ばれた大倉真隆は、借金の増えるのを止めるために、増税に重きをおいた。

彼は大平正芳総理に消費税導入を働きかけた。

元大蔵官僚でもある柳沢伯夫は消費税の特質をこう語る。ごまかしの効かない税であると。

歳出の伸びを20から13パーセントに抑えた大倉だったが、消費税導入を訴えた大平政権は選挙で敗北した。

1989年、3パーセントの消費税が導入された。時はバブルで、税収も1.5倍になっていた。


橋本龍太郎と小渕恵三

このために、平成2年は国債の新規発行額を0にすることができた。しかし、数年後に再び国債発行が復活。

その背景には、アメリカのクリントン政権の強い対日要求があった。アメリカは当時、不況にあえいでいた。そこで、日本が減税をして、アメリカ製品を買うように求めたのだ。

細川護煕総理は穴埋めとして消費税を7パーセントに上げるという斎藤次郎の案を容れ、発表したが、あまりの世論の反発の強さに即時撤回した。

そのため、減税だけが残ってしまった。政府や大蔵省は、消費税を上げる必要性を国民に理解してもらうことに失敗したのだ。

平成10~12年の間に、国の借金は100兆円も増えた。平成9年に橋本龍太郎総理は歳出の大幅カットを打ち出した。当時官房副長官だった与謝野馨は、6年で赤字国債から脱却するために、消費税を5パーセントに上げたと振り返る。

しかし、政権が予想していなかった金融危機が起きた。山一證券と拓銀(北海道拓殖銀行)が破綻してしまったのだ。その原因は、不良債権処理の遅れだった。

平成10年、小渕恵三内閣は経済再生を掲げた。宮沢喜一大蔵大臣(当時)は、大きな減税を行った。また、連立政権だったために各党の主張を盛り込んだために、予算が拡大してしまった。


○番組の感想

テーマが重いので、見ていて疲れてしまう番組でしたが、なぜ862兆円もの借金ができてしまったのかをわかりやすく解説してくれる、良質なものでした。こういう番組は民放ではやりませんね。

そもそも、赤字国債の発行は法律で原則禁じられています。戦前に、戦費をまかなうために国が赤字国債を乱発した苦い経験があるからです。

しかし、東京五輪の後の不況を打開するために法律をつくって赤字国債を発行してしまいました。その後も同じように「禁じ手」である赤字国債の発行が今日まで続いているのです。

当時の大蔵官僚も、赤字国債を発行することは麻薬のように危険だと認識していました。

しかし、田中角栄首相が社会保障を拡大することを打ち出したことなどにより、歳出が膨れ上がってしまいました。そのためやむなく赤字国債発行が続いてしまったのです。

これを見ると、そもそもの原因は政治にあったといえます。ただ、戦後の復興に尽力してきた世代が、福祉の向上を望んだのも事実です。

おそらくこの頃の日本は、所得倍増計画、日本列島改造論など、まだまだ経済成長は続いていくと思ってしまっていたのでしょう。

しかし、いつまでも高度経済成長はできません。余談ですが中国も、高度経済成長を続けており、数年以内にGDPが日本を抜くだろうといわれています。

しかし、国内では賃上げストライキが相次ぎ、日本企業などにとっては「人件費が安い」というメリットは薄らいできました。

また、一人っ子政策によって、中国の労働人口もあと10年ほどで頭打ちになるそうです。成長によって経済格差も広がる一方で、社会保障の充実を求める声が大きくなりそうです。


○景気対策の効果は出なかった

人民元の切り上げ要求も強まっています。これらを見ると、中国も当時の日本に似てきた気がします。つまり、高度経済成長はいつまでも続かないということです。

日本も、2度のオイルショックによって高度経済成長は終わりました。しかし、ここで足かせになったのが先の社会保障の充実です。

確かに、公共事業はその年は減らすということができます。しかし、社会保障は制度ができてしまえば、その年だけ減らすということができません。これが歳出増につながってしまいました。

ちなみに、現在の日本も社会保障費が毎年約1兆円も増大しています。早く何とかしないと、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)がどんどん悪化してしまいます。

実際、日本の借金がこれだけ増えてしまった主な原因は、社会保障費の増大だと言われています。

その後、福田赳夫総理(福田康夫元総理の父)が税収を増やして借金体質を改善しようと、景気対策を打ち出しました。その背景には外国から「もっと経済成長してくれ」という要求があったとは驚きでした。

こうした要求を突っぱねることはできなかったのでしょうか。成長率を3パーセントも増やすというのは簡単にはできません。

しかし、成長の目標は達成できず、景気対策の原資となった借金だけが残ってしまったという悲しい結果でした。

今の日本の財政問題についても、「経済成長を促すことで税収を増やし、借金を減らそう」という上げ潮派と呼ばれる考えがあります。


上げ潮派への疑問

デフレ不況に悩み、税収の落ち込んでいる日本経済を考えると、こうした考えにも一理あると思います。

ただ、経済成長を追い求めるだけで歳出削減などはしないというのであれば、それには疑問を感じます。

なぜなら、第一に景気がよくなれば、株価や地価も上がるので、国債を買う人が少なくなります。そうすると、国債の金利が上がるので、国債費の負担が増えてしまうからです。

第二に、それと関係しますが、景気がよくなればそれだけで金利が上昇します。銀行などが国債保有よりも貸出金利で儲けられるようになるからです。

第三に、国と地方の長期債務残高は860兆円以上と膨大なので、いくら税収を増やせてもプライマリーバランスの赤字を減らすことはできるでしょうが、黒字にして借金を減らすところまではなかなか行かないでしょう。

第四に、もし税収が増えたとして、それを借金返済に全部回すのでしょうか。それならよいですが、無駄な公共事業などにつぎ込んでしまうのではないでしょうか。

確かに経済成長を目指すのは必要ですが、それだけでは借金問題の解決は難しいと思います。

こうして増え続けてしまった国の借金に大蔵省も危機感を強めました。しかし、消費税上げを掲げた大平内閣は選挙で負けてしまいます。

大蔵省の大倉氏は、国民の理解を得られるだろうと期待したが甘かった、とおっしゃったようです。

確かに、消費税は子どもから高齢者まで、経済的余裕のない世帯にも負担を強いる税ですから、国民の反発が大きかったのも理解はできます。


消費税を上げる理由のしっかりした説明を

しかし、国民の反発を招きやすい消費税だからこそ、やはり政府にはなぜ消費税を導入しなければいけないのかを国民に理解してもらう努力が必要だったはずです。

国の借金が増えすぎて、このままでは財政悪化が進んでしまう。それは国債費増大につながり、予算を圧迫する。日本への信頼を損なってしまう。

そうしたことを丁寧に国民に分かってもらわないと、選挙では負けてしまうでしょう。

これは今の政治でも同じだと思います。私もできるなら消費税を上げずに国の累積債務を解決してもらいたいですが、それは無理でしょう。

先の国政選挙の時、自民党の谷垣総裁が消費税を上げることを明言し、民主党の菅直人代表も消費税上げを検討すると明言しました。

菅さんの発言には準備不足だとの反発が党内からもあったようです。私も唐突だとは思いましたが、こうした発言は勇気のあるものだったと評価しています。

ただ、なぜ10パーセントにするのかという理由は明らかでなく、説明不足だった点は否めません。

なぜ国の財政再建をしなければいけないのか、消費税はどれだけ上げなければいけないのか、低所得者層への配慮はどうするのか、消費税上げで景気は悪化しないのかなどの疑問に内閣はしっかり答えて欲しいと思います。

米国のバラク・オバマ大統領は最近は低支持率になってしまいましたが、大統領選のときは名演説で観衆を沸かせていました。

一方、日本の総理大臣の感動するような演説を私は聞いたことがありません。

オバマさんのような演説を期待はしませんが、せめて総理大臣にも国会で下を向いたまま官僚の書いた原稿を読み上げるだけでなく、もっと国民に直接語りかけていただきたいと思います。

日本の総理大臣は直接民主制(国民が直接選ぶ)のでなく、間接民主制(選挙で選ばれた国会議員が選ぶ)仕組みだという違いもあるでしょう。

それでも、消費税上げのような重要な政策については、総理が国会で答弁するだけでなく、例えば記者会見を開いてじっくり時間をかけて、前述のような消費税に対する国民の疑問や不安に答えて欲しいと思います。

そうすれば、国民も消費税上げに理解が深まるのではないでしょうか。

ちなみに、番組の中では、こうして消費税導入や税率上げの際に、大蔵省(現財務省)が国民の理解を得ることに失敗した上に、大蔵官僚の天下りや接待(MOF担という言葉もありましたね)で国民の反発を買い、いよいよ財政問題に対する発言力が失われたと指摘されていました。

橋本龍太郎内閣の行政改革路線も、方向としてはよかったと思うのですが、金融不安で景気が後退してしまい、タイミングが悪かったですね。

その後、小渕恵三総理が経済再生を目指しましたが、今度は大量に赤字国債を発行して、総理自ら「借金王」を自認してしまうほどでした。これはやはり財政の面で問題があったと思います。


社会保障の整備などで財政再建を

当時の大蔵大臣であった宮沢喜一さんも、英語に堪能な優秀な方でしたが、借金を大きく増やしたことで後世に厳しい評価をされることを覚悟されていたそうです。

それ以降のことは番組では触れていませんでしたが、小泉純一郎総理が聖域なき構造改革に取り組みました。

例えば、郵政民営化によって、国民の郵便貯金が原資となって財政投融資という形で特殊法人などに流れ、無駄遣いされることを防ごうとしました。

また、社会保障費も削減しました。小泉首相の考えは、国が最低限のことだけを行う「小さな政府」を目指し、「官から民へ」というスローガンのもと、なるべく民間にできることは民間に任せようというものでした。

また、規制緩和も進めました。結果としては、例えば後期高齢者医療制度が国民の反発を招いたり、タクシー業界が競争激化になってしまったりという問題もありましたが、国の無駄な支出を減らし、財政を立て直そうという首相の考えは方向としては正しかったと私は思っています。

ただ、小泉総理は増税は一切しようとしませんでした。それが「小泉劇場」といわれるような国民の熱狂的な支持を集めた原因の一つだったでしょうが、やはり少子高齢化で年々増え続ける社会保障費を増税なしにまかなうのは無理だったのだと思います。

その後、自民党出身の総理大臣が続けて任期の途中で辞任したり、失言が相次いだことなどが理由で、自民党と公明党から民主党へ政権交代しました。

ただ、鳩山由紀夫総理は財政規律を重視するどころか、マニフェスト(公約)を実現するために約44兆円にも上る赤字国債を発行してしまいました。

そして現在は菅直人総理です。日本国債の格付けは先進国で最低ですし、さらに引き下げられる可能性が指摘されています。このままさらに債務が増えれば、利払い費などが予算を圧迫します。そして何らかの事情で金利が上がってしまうと、予算がまともに組めなくなる危険すらあります。

やはり政府・与党には、崩壊しつつある社会保障(年金、医療、介護)を世代間格差をなくすなどの工夫をしながら抜本的に改革していただきたいです。

それには消費税上げも欠かせませんが、それは社会保障制度を整備して国民の将来の生活を保証するためのものだということをじっくり説明していただきたいです。

その一方で無駄な規制緩和や経済特区の活用などで経済成長をはかり、また歳出削減にも取り組めば、まだまだ日本の財政問題は解決できると思います。

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