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財政再建のための方策を探る

財政再建のための方策を探る

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(日本経済新聞10/10/14 やさしい経済学 一橋大教授北村行伸氏の記事から引用)

(中略)日本の債務残高は国内総生産(GDP)比で見て200%に近く、経済学者の中には財政破綻やハイパーインフレを警戒する向きが少なくない。
19世紀の英国の債務管理に倣い、財務省は低利での借り換えや債務の長期化を進めている。
だが長期不況で税収が落ち込む一方、社会保障費などを中心に財政支出の増大が続き、財政赤字は拡大し続けており債務危機の可能性も高まる一方である。
では、18世紀半ばから英国で行われたような既発国債から永久国債への借り換えは国債費の節約になるだろうか。
筆者は、日本の1990年代以降に発行された国債に関し、満期到来時点で永久国債に借り換えると国債費はどうなるか、シミュレーションしてみた。
現在、20年国債の利回りが2.4%程度であることを考えれば、永久国債を入札した場合には利回りは最低でも2.5%から3.5%程度となると考えられる。
その場合には、財務省がとっている普通国債を60年償還ルールで借り換えた場合の国債費の方が安くなり、節約にはならない。
従って、既発国債の永久国債への借り換えは節約効果がないといえそうである。
では、財政破綻やハイパーインフレを回避しつつ、政府債務を削減するにはどうすればよいのか。
現行の低金利の経済環境の下で、活力のある近隣の新興国家の成長力を最大限利用しながら、経済の生産性を高める成長戦略をとり、税収の自然増を目指す。
そして長期的には消費税引き上げも実施して、財政収支を黒字化する。政治家も財政規律の維持が国債市場の崩壊を食い止めている最後の防波堤であることを理解し、無責任で人気取りのためのばらまき政策はやめる必要がある。
国債とは国家の借金だが、政治家が財政をコントロールできているとの信認を得てはじめて投資家や金融機関が安心して保有するものだ。
また国債市場は財政再建と金融政策が直接交わる場でもあり、政策の一方的な押し付けは、これまた市場の信認を得られない。
(中略)長期的な視野から財政再建を考えるべきである。その努力と工夫の中から資本主義の将来を支える仕組みが生まれてくるはずだ。

(引用終わり)
日本の国と地方の長期債務残高は2010年度末の時点で約862兆円になると推計されています。これに政府短期証券(FB)を加えると、すでに借金の額は1000兆円を超えています。

財政破綻については、定義がいろいろあるでしょうが、私は国債費を国が払えなくなったときだと解釈しています。

現在は1年当たり20兆円以上の国債費(国債の償還、利払い、償却に充てるお金)をなんとか払えていますが、それも年に約44兆円も赤字国債を新規発行した上でやりくりしているのです。

そして、今後例えば日本国債の格付けが大きく下げられる、投資マネーが株式市場などに向かう反動で国債の買い手が少なくなる、などの事態が起これば、国債の金利が大きく上昇する可能性があります。

そうなりますと、現在でも約10兆円の利払い費が大きく膨らんで、もはや支払えなくなる可能性もあります。財務省の試算では、金利が1%上昇すると、利払い費の増加額は4.6兆円ほどだそうです。

いったんそうなってしまえば、新しく国債を引き受ける金融機関や個人投資家などは激減するでしょう。

元本や利息の支払いを先延ばしするリスケジュールという手もあるでしょう。しかし、リスケをしなければならないほどリスクの高い国債を買う人がはたしてどれだけいるか、私には疑問です。

つまり、今の日本の財政は、借金(新発赤字国債など)で借金を返す自転車操業に陥っています。新しく借金を借り続けられれば、それを続けることはできます。

しかし、もう誰もお金を貸してくれないとなれば、会社なら倒産です。

そこで、政府としては意図的にインフレを起こすという手段があります。どんどんお札を刷って、日本中にばらまけばよいのです。

こうすれば、お金の量が急増するので、お金の価値が下がります。例えば200倍のインフレになれば、1000兆円の借金も実質5兆円に圧縮できます。

ハイパーインフレとは、1年に数十%を超えるインフレです。国が巨額の累積赤字をチャラにするためには、やはりハイパーインフレになるでしょう。

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インフレは解決にならない

また、国があえてインフレにしようとしなくても、国債のデフォルトが起きるようでは、その時点で円に対する信認が大きく失われているでしょう。

そのため、国がわざとインフレにする調整インフレをしなくても、自然とインフレになるでしょう。

ところで、国がお札をたくさん発行してハイパーインフレを起こしても、結局は国債のデフォルト(債務不履行)とほとんど同じことです。

なぜなら、国債の利払いや償還によって国債保有者が受け取るお金も、インフレの分だけ価値が大きく下落しているからです。

たとえば200倍のインフレなら、200万円の国債の償還を受けても、実質は(現在の価値にして)1万円の価値しかありません。

つまり価値が200分の1になってしまったのですから、ほとんど債務不履行と変わりありません。

また、ハイパーインフレは経済や社会に大混乱を起こすので、国の借金を返すための策だとしてもありえないものです。

このように、財政破綻やそれとほぼ同じハイパーインフレが、経済学者の中でも懸念する方が少なくないようです。

先日も、日本経済新聞が経済学者へのアンケート結果を公表していましたが、財政問題を心配する声が(具体的な割合は忘れましたが)多かったです。

ちなみに、国債には60年償還ルールという妙な制度があり、満期が来ても一度に償還せず、残りは借換債を新たに発行するという仕組みになっています。


60年償還ルールとは

つまり、例えば10年物の国債を買っても、10年後に元本と利息が全額支払われるのではなく、この場合はその1/6しか支払われないのです。

残りは借換債を新たに発行されて、20年後にまた1/6…というように償還されます。
参考:財務省の資料

私ならこれを聞いただけで国債など買いません。10年後に返済しますよという債権が、なぜ返済期限が60年後まで延びるのでしょうか? 理解ができません。

ただし個人向け国債は満期が来れば全額償還されるようです。

この60年ルールがあるということは、償還期が来ても全額を償還する必要がなくなります。国にとっては好都合でしょうが、これでは借金をするという真剣味がなくなるでしょう。その結果、借金が膨らむはずです。

その証拠に、借換債の新規発行額は年々増え、08年度には約92.5兆円になっています。

さて、このような巨額な累積債務に悩まされている日本ですが、北村教授が書いておられるように、社会保障費が年々増大しています。具体的には、毎年1兆円ほど増えています。

ということは、基礎的財政収支(プライマリーバランス。借金を除いた歳入と歳出とのバランス)が毎年どんどん赤字が増えていってしまうということになります。

そこで、引用記事では永久国債への借り換えは効果的かを検証しています。

永久国債とは、利子を払う義務だけを国が負い、元本を償還する義務を負わない国債です。


永久債は節約効果がない

永久国債は、利子さえ払えば元本は払わなくて良いので、国債費が大幅に膨らむのを防ぐことができます。そのために注目されているのでしょう。

しかし、北村教授は満期の到来した時点で既発国債を永久国債に借り換えても、国債費を抑えることはできないというシミュレーション結果を書いておられます。

その理由は、永久国債は元本の償還がない分、普通の国債よりも金利が高くなります。そうすると、60年償還ルールによって借換債を発行している今の方法のほうが、かえって国債費が安く済んでしまうとのことです。

もし60年償還ルールという(本当におかしな)ルールがなければ、国債の満期が来た時点で、国は一斉にそれらの償還をしなければいけません。

そうすると、一時的にせよ国債費が膨れ上がってしまい、ただでさえ苦しい財政をさらに圧迫してしまいます。

そうであれば、永久債はそれを防ぐことができるので、価値があったかもしれません。しかし、60年ルールがあったために、満期が来ても元本の一部だけをその時に償還すればよいので、永久債はそれを上回る効果を出せそうにないのです。

また、仮に永久債に国債費を抑える効果があったとしても、国債を保有している人にとってはどうなのでしょうか。例えば600万円の10年物国債を持っている人が、買ってから10年後に満期が来たとします。

すると、60年償還ルールによって100万円と利息が支払われたうえで、残り500万円分は永久債に切り替わり、元本は償還されなくなるでしょう。

すると、多くの国債保有者はおそらく3%くらいの利回りでは「冗談じゃない!」と怒るのではないでしょうか。


永久国債は現実的でないと思う

もし自分の国債が永久債になったら、元本が弁済されない分も金利でもらわないといけないからです。

すると、それだけでも金利がかなり高くなり、利払い費だけでも大幅増になってしまうかもしれません。北村教授も、「最低でも」2.5~3%と書いておられます。

少なくとも、「元本が償還されなくなる」というのは例えば個人向け国債を保有している人などにとっては大きな衝撃だと思います。「そんなことをしなければいけないほど、国は危ないのか」と考えて、国債を売ってしまうかもしれません。

そうなれば既発国債の暴落、金融機関の破綻などにもつながりかねません。

また、永久国債は株式に例えられるようです。金利(株では配当)はもらえますが、会社が駄目になってしまえば倒産などもありえるからです(そうすると元本は返ってきません)。

そして、国債を永久国債に借り換えるということは、いわば負債を膨大に抱えている会社(日本政府)の株を買うということです。

おまけに日本は負債が多いだけでなく、毎年の決算で大赤字を出しています。プライマリーバランスが平成20年度で5.2兆円のマイナスでした

こんな会社の株を買う投資家はよっぽど勇気があるとしか思えません。新発国債(新しく発行する国債)を永久国債にしても、買う人や企業などがどれだけいるでしょうか。

こうしたことから、やはり永久国債は現実的でないと思います。


金利が上がることの問題点

さて、北村教授はそれでは財政破綻やハイパーインフレを回避しつつ、国の借金を減らしていくためにどうすればよいのかということも書いておられます。

まず、現行の低金利の経済環境の下で、という点について。これは、金利が上がってしまうと、国債の利払い費が増えてしまう問題があるからです。

具体的には、固定金利の新発国債や、新発・既発の変動金利型国債の金利が上がってしまいます。

そして、金利が上がってしまう原因としては、以下のようなものがあります。第一に、格付機関(スタンダード・アンド・プアーズ、ムーディーズなど)が日本国債の格付けを大きく下げること。

現在でも日本国債の格付けはムーディーズによるとチリやボツワナよりも低いのです(面白いほどよくわかる最新経済のしくみ 神樹兵輔 日本文芸社)。

これがさらに引き下げられる可能性があることについては、S&Pなども言及しています。

第二に、景気が回復して株価や不動産価格(地価)が上昇すること。そうなると株や不動産などに投資マネーが流れ込む反動で、国債を買う人が少なくなるからです。

国債の利回りは入札で決まるので、買う人が少なければ金利が上がるのです。

第三に、同じく景気がよくなることで、銀行などが国債を引き受けなくなること。景気がよくなると、金融機関からお金を借りる人が増えるので、貸付金利も上がります。


国債の金利が上がる原因

そうなると、銀行などは金利の低い国債を買うよりも、企業などへ融資したほうが利益が大きくなりますので、国債をほしがらなくなります。

現在は、国債の多くを銀行などの金融機関が買っていますので、札割れ(入札枠に対して応札が少ないこと)が起きるかもしれません。

そうなると、国債を引受るからには金利を高くして欲しいということになりますので、金利は上がります。

第四に、銀行に新たなBIS規制が導入されて、国債を保有している銀行はそれに応じて引当金を積まなければならないなどの事態になった場合。

BIS規制とは、国際決済銀行が決めた、国際業務を行う銀行に対する資本規制です。これは、銀行が破綻して金融システムに支障が出るのを防ぐために、銀行は一定の自己資本を備蓄しておきなさいというものです。

そして、たとえば日本国債がいよいよ危ないとなれば、日本国債を保有している銀行は危ないから、その担保として引当金を積みなさいということになりかねません。

そうすると、銀行は引当金を積むためにお金を調達することになります。あるいは日本国債を減らそうとするでしょう。どちらにしても、銀行は国債を売りますので、既発国債の価格が暴落する危険性があります。

すると、新発国債については、まず国債の引き受け手である銀行が資金に余裕がなくなって買いづらくなるでしょう。また、既発国債が暴落によって安く買えるので、新発国債はその分金利を高くすることが求められるでしょう。

こうして金利が上がります。


低金利のうちに解決を

このように、今でさえ年に20兆円を超える国債費なのですから、これ以上国債費を増大させることは本当に予算が組めなくなってしまうような状況につながってしまいます。

そこで、金利が低いうちに巨額の累積債務を減らしてしまわなければいけないのです。

最近、政府・日銀が円高是正のために円売り介入をしましたが、そのときに非不胎化(為替介入に使った資金を市場から回収しない)という手法をとりました。

これは、量的緩和によって金利を低いままにしておくという狙いもあったようです。

10月に決定した日銀の包括緩和策も、ゼロ金利政策などが採用されました。これは、金利を下げてデフレを脱却し、景気を回復させようという狙いもありましたが、国債費を増やさないという狙いもあったのではないかと思います。

なお、国の借金については、景気を回復させ、経済成長率を高め、税収を増やすことで解決しようという説もあります。

もちろん一理あるのですが、世代会計を研究されている小黒一正氏は、常に経済成長率が伸びるわけではないので、解決にはならないとおっしゃっています。

次に、近隣の新興国の成長率を利用して日本も成長し、税収を増やそうという点について。これはまさに目指さなくてはなりません。

例えば中国、東南アジア、インドなどのことを念頭において書かれているのだと思います。


消費税引き上げは不可欠

国の累積債務(借金)問題を解決するには、税収を増やすか、歳出を減らすしかありません。経済成長ができて法人税や所得税などの税収が増えれば、それは一番よいことです。

ただ、税収を不必要な公共事業等に使ってしまってはいけません。国債は残高が多ければ多いほど利払い負担が増えるのですから、どんどん国債を償還していくべきでしょう。

次に消費税上げについて。これは基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するために不可欠でしょう。

私も心情的には消費税が上がることには反対です。しかし、日本の財政破綻やそれとほぼ同じことであるハイパーインフレを防ぐためには、今増税しておかないと間に合わなくなってしまいます。

そのため、消費税を上げるのは仕方ないと思います。もちろん、消費税は用途を社会保障や国債の償還などに限定する必要があります。

また、社会保障についてはしっかり運営されているかチェックするために別の予算枠にする、年金を賦課方式から積立方式に移行するなどの政策も必要だと思います(小黒一正氏)。

財政収支の黒字化については、菅直人総理大臣も目標を設定しました。菅総理は財政再建の必要性を認識し、消費税上げを検討することを明言されています。

そのため、財政再建という点においては私は菅さんに期待しています。

なお、北村先生も指摘されているように、高速道路無料化などのばらまき政策はいかがなものかと思います。

あまり政党批判はしたくないのですが、高速道路無料化は受益者負担(高速道路を使って得をした人が料金を払うべき)という原則に反します。


高速道路無料化と子ども手当の疑問

高速道路は安全に走れるようにメンテナンスする費用などが必要です。それを、利用者から料金を取らずに、高速を使わない人からも税金という形で取るというのは納得できません。

無駄な道路は作らないようにした上で、なるべく高速料金を安くすれば済む話ではないでしょうか。

もう一つ、子ども手当についてですが、どうも民主党のマニフェスト(公約)通りの支給はできそうにありません。

また、高所得者には子供手当ての支給を制限しようという案もあるようですが、これは手続きが大変で、人件費がかなりかかってしまいます。

また、国の財政が大赤字なのに、財源も確保できずにいつまでもらえるのか、と思っている人も多いはずです。これでは、安心して子どもを産めるようにはならないでしょう。

少子高齢化を防ぐという目的はわかりますが、マニフェスト実現にこだわるのは止めて、子ども手当は廃止した上で、扶養者控除の拡大や(これなら税務署が手続きをするので事務処理のための人件費が増えない)、保育園の増設などに充てた方がよいのではないでしょうか。

記事にあるように、国債は国が国民に対してする借金です。国を信頼できない以上は、国債を安心して保有することはできません。

そして、利払い費増という形で雪だるま式に借金が増えている今、国は本気で累積債務を減らすという方向に向かわないと、財政破綻は起こりうると思います。一刻も早い解決を望みます。

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