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財政再建より経済成長を目指すべきだとの主張を考える

財政再建より経済成長を目指すべきだとの主張を考える

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(日本経済新聞11/2/18から引用)
菅直人内閣はマニフェスト(政権公約の実現に苦しんでいる。その達成のための財源が大幅に不足しているからだ。
マニフェストの内容の吟味は当然必要だが、望ましいのは経済成長率を高め、税収の拡大を図ることだ。(中略)
しかし問題はどうやって成長を実現するかである。政府は金融緩和政策に頼っている。(中略)だが、これはほとんど効果を発揮していない。
お金を借りても需要がなくては、その返済の重みが増えるばかりだからだ。金融政策は経済を引き締めるときには役立つが、拡大させるには不向きである。
(中略)次に増税が考えられている。消費税を引き上げて社会保障の財源をつくるとともに、法人税を引き下げて税収を増やそうというわけだ。
しかし、不況期に消費税を上げて所得を減らせば、税収の減少は必至である。生活必需品は消費税の対象としないなどの対策も考えられるが、それでも消費者の負担は重くなる。
(中略)まして法人税を引き下げるというならば、消費者の反対は激しくなるだろう。税制を見直して社会保障を改善するというような政策が実現するとは考えにくい。
それでは財源が全くないかといえば、そうではない。公債がある。菅内閣は日本の財政赤字の大きさに危機感を抱き、2020年ごろに基礎的財政収支を黒字化するとの目標を掲げているが、それは成長政策と全く矛盾している。
日本の公債が大きいのは民間の資金需要が小さいことの反映である。(中略)国債を保有するのは大半が日本人で、金利も10年物で1パーセント台前半である。
確かに国の借金は多額ではあるが、金額だけをみて心配することはない。
米国では故サミュエルソン、クライン、スティグリッツなどノーベル経済学賞を受賞したエコノミストが、日本が不況を抜け出すには国債発行しかないと言っている。財源には国債を充てるべきだと考える。

日経のコラムに掲載された越渓氏の文章です。財政問題はあまり心配しなくてよい、景気回復で税収を増やせばよいというお考えです。

こうした経済成長を重視する人は経済学者でも評論家でも政党でもけっこう多いですね。


埋蔵金だのみのマニフェストは疑問

ただ、この説には疑問も感じますので、詳しく見ていきましょう。まず、民主党のマニフェストについては、やはり財源を無視したものだったと言わざるを得ません。

民主党は霞が関埋蔵金を発掘して財源に充てればよいと考えていましたが、結局思ったほどお宝は埋まっていなかったようです。

また、埋蔵金が発掘されても、いくつかの問題があります。第一に、それを発掘してしまって良いのかというものです。例えば外為特会の積立金は、(私は詳しくないのですが)非常時に備えるためのものです。

それを余っているからと簡単に取り崩して使ってしまってよいのでしょうか。外為特会の問題点があるなら改善し、その上で積立金について考えるべきではないでしょうか。

第二に、それを借金(累積債務)の返済でなく、政策の財源にしてしまってよいのでしょうか。現在、国と地方の長期債務は860兆円ほどです。

そして、借金があるということは利息を払い、元本を弁済していかねばなりません。現在、予算における国債費は20兆円を超えており、予算を圧迫しています。

さらに今後借金を借金で返す自転車操業を続けていけば、ますます借金は増えていきます。すると、金利が変わらなくても、利払い費と償還費が増えます。

また、いよいよ国債を引き受ける人が減る(あるいはいなくなる)と、金利が急上昇するでしょう。すると、さらに国債費が増えてしまうのです。

そもそも埋蔵金というのは使わないお金が発見されただけなので、それは借金の返済に当てるべきです。そうすれば国債費を減らすことができるので、予算に余裕ができ、その分新規国債発行をしなくてよいからです。

それを、埋蔵金が出てきたからといって使ってしまったら、借金を減らすことはできないのです。よい政策に使って経済成長を促せば、税収が増えるという説もあるでしょう。

しかし、例えば子ども手当をもらっても、貯蓄する人が多いと聞いています。それは生活に不安があるからです。これでは経済成長は難しいでしょう。

また、税収が増えたとして、それを借金返済に充てるのでしょうか。無駄な公共事業などに使ってしまうのではないでしょうか、これまでのように。


金融緩和策

次に、金融緩和政策について。確かに政府・日銀はデフレ脱却のために金融緩和を行って来ましたが、いまだ景気をよくするところまでは行っていません。

その理由は民間需要がないから、金利が低くても借りる人が少ないからだ、と書かれています。そのとおりだと思います。消費者の財布のひもが固くて、モノやサービスを購入してくれないなら、企業も借金して事業拡大などを図るというわけにはいきません。

ただ、なぜ消費が増えないのかを考えないといけないと思いますがそれは後述します。

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増税は景気を冷え込ませるか

次に増税について。不況の時に消費税を上げれば、景気を冷え込ませてかえって税収減になる。私も以前はそう思っていました。

しかし、小黒一正氏の「2020年、日本が破綻する日 危機脱却の再生プラン」を読んで考えが変わりました。小黒氏は、消費税を社会保障の財源にし、社会保障制度を世代間格差を解消して持続可能なものに整備する。

そうすれば、将来の年金や介護、あるいは国の財政に対する国民の不安が解消されて、国民は今まで貯蓄していた分の一部を消費や企業への投資に回せる。そうすれば経済成長もできるというわけです。

つまり、消費税は上げるが、それは国民の生活保障に主に充てるのです。そして、社会保障関連予算を一般会計と別枠にして管理し、世代間格差も解消するように設計します。

こうすれば、少ない人数で高齢者を支えなくてはならない若い世代も年金がもらえるかといった心配をしなくて済みます。将来への心配が減れば、少子化にも歯止めがかかるでしょう。

消費税を上げるということは確かに消費マインドを冷え込ませかねません。しかし、それは自分たちのために使われると分かれば、かえって国民の社会保障制度への不信を取り除き、国民が安心して消費をできるようになるというわけです。

このことから、消費税上げは景気を冷え込ませるという図式は必ずしも正しくないと思います。

もちろん、国民共通番号制度を導入した上で、還付付き税額控除や生活必需品への軽減税率も採用して低所得者へも配慮します。前掲書には、低所得者層へお金を給付することで経済格差を解消することなども書かれています。

つまり、消費税=逆進性が高い(低所得者に負担が大きい)というのも正しくないといえます。


法人税下げは理解を得られるか

次に法人税下げについて。確かにこれは消費者の反発を買う恐れもあります。ただ、法人税率は日本は先進国中トップレベルの高さだと言われています。つまり法人税が国際競争力を削いでいます。

また、大企業などが恩恵を受けてきた減価償却費の優遇などの廃止によって財源をある程度確保するそうですので、やり方によっては法人税下げは理解を得られるでしょう。

一方で、例えばパートの人が思い切り働けるように扶養控除を見直すとか、非正規労働者にももっと社会保険を手厚くするといった策もよいと思います。法人税を軽くする代わりに儲かっている企業にはそれなりの負担もしてもらうのです。

次に、記事中の「税制を見なおして~」の部分について。前述のような社会保障を抜本的に整備して、その財源のために消費税率を上げる。そして国民が安心して暮らせる社会をつくる、ということを丁寧に説明すれば、国民の理解も得られるはずです。

もちろん一方で、年金保険料を官僚が無駄な施設の建設に使ったりできないように国民が監視する仕組みをつくることも必要です。歳出の削減も継続して行っていくべきです。


国債をさらに発行すると

次に、公債(主に国債)を経済成長を達成するための政策の財源にするという点について。

私は菅総理が財政再建に取り組もうとしている点は高く評価しています。突発的に消費税上げを持ち出し、すぐに撤回してしまったのはまずかったですが。

基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を黒字にすることは私は必要だと思います。そうでないと赤字国債をこれからもどんどん発行することになるからです。

これが経済成長政策と矛盾していると書かれてありますが、私はそうは思いません。逆に、国が経済成長を促す施策をするというのは難しいのではないでしょうか。

最近は公共事業による乗数効果(民間への経済効果が投じたお金より増えること)も減っているそうです。

それに、例えば無駄な規制を緩和するというなら、赤字国債を発行しなくてもできるでしょう。

もちろん必要な道路をつくる、道路を整備する、学校や公的施設の耐震補強をするというような必要な事業は行ってもらいたいですが、国が主体的に行える必要な事業はそんなにないのではないでしょうか。

次に、日本の公債が大きいのは民間の資金需要が小さいからだ、というのはそのとおりだと思います。銀行は経済の停滞によって融資する先がない、そこで運用先を求めて国債を買うというわけです。

ただ、国が主導して経済をよくしようとするのも難しいでしょう。


本当に財政を心配しなくて良いのか

次に、国債は大半を国内消化できており、金利も低いから財政悪化をそんなに心配することはないという点について。確かに赤字国債の95パーセントほどを国内の投資家が保有している現在では、仮に国債がデフォルト(債務不履行)になっても、外国にそんなに迷惑はかけないでしょう。

しかし、前掲書には内国債だからといって問題ないとはいえないと書かれています。国内で消化できていても借金は借金です。国債発行によって生じた資産が残っていれば、「国債発行は同じだけ資産が増えるから問題ない」と言えるでしょうが、そうではないと書かれています。

また、金利は確かに今は低いままで収まっています。しかし、金利が上昇基調にあるという報道もあります。また、今後少子高齢化が進めば、国民が金融機関に預けている預貯金も取り崩されます。

すると、金融機関が国債を買う原資が減りますので、今後国債の引き受け手が減って、金利が上がる可能性があります。

また、今後も国の累積債務が膨れ上がれば、日本国債は危険だということになり、金利を上昇させるでしょう。

こうしたことから、現在金利が低いから大丈夫とは言えません。私は国の財政を心配する必要はないとはとても思えません。

もう一つ、先ほど国債の大部分は国内消化できているという話がありましたが、今後は引き受け手が減ります。すると、海外投資家に引き受けてもらおうとするでしょう。

しかし、海外のシビアな投資家がこれだけ火の車になっている日本の国債を買ってくれるかは疑問です。


経済成長だけで財政悪化は止められない

最後にノーベル経済学賞をもらった学者も国債発行をせよと言っているという箇所について。経済学はいろんな考えがあるので、偉い学者が言っているから正しいとは断定できないと思います。

確かに経済成長が実現できれば、税収は増えるでしょう。しかし、前掲書には経済成長だけでは財政悪化を止められないとあります。

これだけ膨れ上がった累積債務を、経済成長によって増えた税収だけで返済していくことは事実上難しいと思います。なぜなら借金は利息も払わなければならないからです。

また、税収が増えたとして、それのほとんどを借金返済にきちんと回すのでしょうか。これまで国がやってきたことを考えると、また無駄遣いしそうです。

もちろん消費税が上がらなければ私も一消費者としてうれしいです。しかし、破綻寸前と言われる社会保障、具体的には年金、医療、介護を税収増だけで立て直せるでしょうか。

どんどん増えていく国債費を増税なしで減らしていけるのでしょうか。国債を発行すればするほど国債費は更に増えてしまいます。


国債暴落、金利急上昇の恐怖

私はこれ以上国の借金を増やすことには反対です。市場は一気に動きますので、日本がさらに借金を増やし、増税をしないとなれば、日本は危ないとなって一気に日本国債が売られる可能性は高いと思います。

そうなれば既発国債の価格は暴落します。それは金融機関の破綻にもつながりかねません。金利も急上昇するでしょう。

金利が上がれば、個人は住宅ローンなどが非常に重くのしかかります。銀行預金の利回りは上がるでしょうが、その恩恵を受けられるのは一部の富裕層のみでしょう。

企業も銀行などから融資を受ける際の金利が上がり、経済は停滞するでしょう。私はこのまま財政悪化を放置するほうが、経済成長を阻害すると思うのです。

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